リソース・アロケーションの概念を成立させ、維持してきたのは、終身雇用制による長期雇用です。私が新卒で就職した頃の日本企業は、ほとんど終身雇用制でした。
いったん新卒で入社したら長く働くことが前提で、若いうちは自分のやりたいことはできない。個人の意志を通すことはわがままとされ、人事異動を断ったらその会社には居られない。不本意な配属や長時間労働にも我慢することが求められました。
その引き換えに、たとえモチベーションが低くても、エンゲージメントがなくても、ずっと働けば給料は上がり、退職金もたくさん出るという構造になっていました。
しかし現在、その概念は通用しなくなりました。
安定経済成長を前提とした長期雇用が崩れ、自己犠牲を求める滅私奉公的な働き方は過去のものと化しています。
若い人で、今の会社で定年まで勤め上げようと思っている人は、おそらくほぼいないでしょう。
「昭和型」の価値観は終わりを迎えたのです。
その後に入社してきたのがいわゆるZ世代といわれる人たちで、しばしば、上の世代とのジェネレーション・ギャップが取り沙汰されています。
これはしかし、無理もない話です。私が新卒だった1989年から1999年の10年間に起こった出来事と、2014年から2024年の10年間に起こったことは全く違います。
「メールの文末に句読点がつくのは威圧的だ」という彼らと、「会社を休むのにどうして電話をかけてこない」という我々とでは、全く別の価値観をもっているのです。
ここまで最大化されたギャップが、これから改善することはないと思います。ましてや昭和型のマネジメントでここを埋めるのは、不可能な話です。
日本では軽視される人事部が
本来果たすべき役割
2つ目の原因は、日本企業における「人事」の存在感が低いことです。
外資系企業では、部署間の力関係は全て平等です。人事も営業もマーケティングも経理も物流も、みな等しく発言権をもって円卓を囲んでいるイメージです。