タワーマンション写真はイメージです Photo:PIXTA

長年、不動産関連の取材を行ってきたジャーナリストの原信昌氏によると、「築50年超でも、月1万円あればリセール価格は落ちていない」という。取材で明らかにしたマンション大規模修繕工事費の適正価格(工事項目別)と、マンション管理費を適正化させるポイントを図版で詳しく解説する。(ジャーナリスト 原 信昌)

なりすまし事件は部外者だったが
管理会社は合法的に受注誘導している

「金の匂いしか、せえへんな」――。これは、不動産詐欺をテーマにした大ヒットドラマ「地面師たち」でのセリフだ。

 千葉や神奈川で工事会社関係者がマンション住民になりすまし、大規模修繕の工事会社選定を巡り、管理組合内で受注誘導をしていた事件が発覚。3月には、30社以上の工事会社が、談合疑惑により、公正取引委員会の検査を受けるなど、マンションの巨額工事を巡る不適切事案が発生している。

 ある業界OBが言う。

「マンション管理でお金がかかる大きな原因は、物価高ではない。今回の問題で分かったように、マンションの管理組合は億単位の巨額なお金が動き、常に狙われている。この背景には住民側がマンション管理に無知、無関心なため、当事者以外の人間や営利企業にその判断を委ねてしまう構図がある。プロにとっては非常にだましやすく、お金になる。

 最も問題なのが、管理会社だ。

 地味な存在だが、管理組合の資金から収益を上げる業種で、そのスキームがリベートスキームであり、そのために必要なのが住民には極秘の業者間談合だ。今回のなりすまし事件は部外者だったという点で違法だが、管理会社は合法的に堂々と理事会に参加し、リベートを得られるお抱え業者やグループ会社への受注誘導を、『理事会支援』の大義名分でやっている。

 当然、自社の営業目的の“サポート”のため、不要不急の工事営業も少なくなく、必然的に割高になる。こちらの方がはるかに問題が大きく、組合会計にとっては痛手だ。これが維持費高騰を招き、住民の可処分所得と物件の資産価値にダメージを与える」

 管理会社の決算資料を見ても談合・リベートのスキームなしには、事業が成り立たない構図になっている。マンションの維持費が高いと感じるのは、管理や工事の費用に占める、管理会社の見えない手数料が高すぎることに尽きる。

 とはいえ難しいのは、工事をやらないこともできず、大規模修繕工事は避けては通れない。その上で、談合被害を防ぐには、適正金額とその必要性を把握しておくことが重要だ。