そして海外旅行や大好きなアーティストのライブなど、物質ではなく非日常性や特別感のある経験にお金を使いたいという考えを強く持っていました(脱物質)。さらに、買い物には時間をかけたくないという気持ちも顕著でした(省力化)。
一方で、別の大学生の女性に話を聞いたところ、新しいものがどんどん欲しくなる点は同じでしたが(短命性傾向は強い)、買い物で悩む時間を減らしたい気持ちはありながら、実際には良いものを選ぶためにしっかり吟味をしていました(省力化傾向は弱い)。
また、旅行や友人との交流には物よりも大きな楽しみがあると思う反面で(脱物質傾向は強い)、自分は所有欲が強く、物を自分の手元に置いておくことで満足感が得られるタイプなので、サブスクリプションやレンタルを利用するのでなく、購入して所有したい気持ちが強いと答えていました(アクセス・ベース傾向は弱い)。
これらの発言から、「リキッド消費とはこういうものだ」と決めつけてしまうと、見落としてしまうことが多々あることがわかります。ひとりひとりの生活を「小さく」見わたし、それぞれの場面を鮮明に理解していくことが、リキッド消費という概念をとおして時代の変化や現代人の生活を読み解くのに役立ちそうです。
リキッド消費には
2つの傾向がある
リキッド消費のなかにも「ピュアリキッド」といえるようなタイプもあれば、「セミリキッド」といったタイプもあります。
実際の分析でも、こうした傾向が観察されました。ピュアリキッドとは「短命性」「アクセス・ベース消費」「脱物質」「省力化」の4つの特徴がいずれも高い傾向の人たちのことであり、セミリキッドとは、4つの特徴の一部においてだけ高い傾向を見せる人たちのことです。
今回の調査に協力してくれた若者のなかに、あらゆる方面でリキッド消費傾向を見せた、Cさんという大学生の男性がいました。以下では、ピュアリキッドの典型ともいえるCさんの事例を中心に、リキッド消費傾向の強い若者の具体的な行動を4つの特徴に対応させながら考察していきましょう。