この作風もまた、やなせ先生が創刊した『詩とメルヘン』に受け継がれていきます。そして面白いことに、やなせ先生が『厄除け詩集』に抱いた感想とほぼ同じ声が、『詩とメルヘン』の読者たちから寄せられることになるのです。

当初の予想を大きく覆し、『詩とメルヘン』は大いに売れました。こんな簡単な詩を集めた雑誌でも売れるのならばと思ったのか、似たようなものがいくつか生まれたそうですが、それらは長続きせず廃刊したようです。
やなせ先生の作品は、たしかに平易に書かれていて読みやすい。なんだか簡単につくれそうな気がしないでもありません。
しかし、これらの作品は、幅広い教養・技術・経験に裏打ちされたものであり、ただ簡単に読めるだけという代物では決してありません。難しいことを難しく表現するのは容易である一方、小難しいことを簡単に表すのは難しいわけです。類似した雑誌が廃刊した一因として、ただ単に簡単なものを簡単に表現してしまったという愚行が関係しているように思われます。