中国は、「一帯一路」構想やBRICSの枠組みを通じて、アメリカ主導の秩序とは異なる経済・政治モデルを提示してきました。
ウクライナ侵攻においても、中国はロシアへの直接的な軍事支援こそ行っていないものの、経済的・外交的に一定の支援を継続しており、西側諸国からは「規範を共有しない強国」として警戒されています。
また、習近平政権下で進行している個人独裁化と情報統制の強化は、民主主義国家とは対照的存在として、国際政治に緊張をもたらしています。
ロシアはウクライナ侵攻を機に、国際社会の中で「ならず者国家」の地位へと移行しました。国際法の無視、戦争犯罪、民間インフラへの攻撃など、従来の国際秩序に挑戦する姿勢が鮮明になっています。国連安全保障理事会の常任理事国であるにもかかわらず、ルールを無視した行動が国際機関の機能不全すら引き起こしています。
このように、Gゼロの世界では「誰もリーダーを担わず」「規範を破る者が力を得る」という逆転現象が起きています。トランプ政権の復活は、この流れに拍車をかけているといえるでしょう。
世界中に広がる
相互関税の脅威
トランプが掲げる相互関税の脅威も世界中に広がっています。
アメリカが関税を強化するたびに、相手国も報復関税を導入する傾向があり、自由貿易体制は次第に崩壊の危機に瀕しています。なかでも米中の関税戦争の影響で、各国は安価な中国製品の流入にさらされ、自国産業保護のために自らも関税を引き上げざるを得ない状況に置かれています。
これは「保護主義ドミノ」と呼ばれる現象であり、各国の製造業に打撃を与えるだけでなく、グローバルサプライチェーンそのものの崩壊につながります。
輸出依存型経済である日本や韓国、東南アジア諸国にとっても深刻な脅威です。
トランプ政権における経済政策、すなわち「トランプノミクス」は、「雇用創出」や「アメリカ製品保護」のスローガンを掲げていますが、実質的には単独主義と短期的成果を追求する「関税主導」の政策体系となっています。