増田:戦後80年の日米関係を振り返ってみて、今のこの変化をどう評価すればよいでしょうか?

池上:戦後の日本は、アメリカとの関係を軸に復興と成長を遂げてきました。日米安保は日本の安全保障の根幹を支えてきましたが、時代は変わりつつあります。トランプのような、伝統的な同盟観を持たない指導者の登場により、「日米関係の自動安定性」はもはや過去のものとなりつつあります。

増田:「アメリカ頼み」の時代が終わるということですね。

池上:はい。日本は自立した外交、安全保障政策を構築する必要があります。そのためには、憲法や防衛費のあり方だけでなく、国民の安全保障に対する理解や意識も問われてくるでしょう。

 米中対立が続く中で、どちらか一方に過度に寄るのではなく、自国の立場を見極めたうえで主体的に動く必要があります。

増田:「トランプ後」の日米関係は、これまでの延長線上ではない新しいステージに入っていく気がします。

池上:そうですね。アメリカの政治が不安定になっている今こそ、日本にはバランス感覚と戦略的な視野が求められます。自国の利益と未来をしっかり考えつつも、自由や民主主義といった価値を大切にしないといけませんね。

 トランプは、ある意味で、私たちを目覚めさせてくれたともいえます。日米関係80年の節目を迎え、過去に学びつつ、新しい未来を主体的に切り開いていくときに来ているのですね。