社会から孤立している人がいること自体、世間には認識されていないことが、深刻な問題なのだ。
生きている間に社会から孤立しているのであれば、自宅で倒れても、誰からも気づかれずに亡くなり、死後相当日数が経過して発見される可能性は高くなる。つまり死後経過の長い孤立死は、生きている間の孤立の問題の延長にあるといえる。
80歳の親が死んだその日から
未婚の50歳が路頭に迷う
戦後、私たちのライフスタイルは大きく変わった。例えば子どもがいても、高齢期は夫婦のみで暮らすのが当たり前になっている。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2040年には、世帯主が65歳以上の世帯のうち、40.0%がひとり暮らしになり、東京都では全国最高の45.8%にのぼるとされている。
また50歳時点で一度も結婚経験のない人の割合を示す生涯未婚率は、2020年には男性が28.3%、女性が17.8%だった。
日本では長らく、「男性は結婚して一人前だ」とされてきた風潮があり、結婚しないという人生の選択肢はほぼなかった。現に1950年の男性の生涯未婚率は1.5%にとどまっている。
特に男性の生涯未婚率は1990年以降、急増しているが、1990年に50歳だった人は現在80歳を超えている。これまで亡くなった男性のなかで一度も結婚したことがなかった人はほとんどいなかったが、これからは、生涯未婚の男性がどんどん亡くなっていく社会が到来する。
80代の親が、自宅にひきこもる50代の子どもの生活を支える、いわゆる「8050問題」も、おひとりさま予備軍の問題でもある。親が要介護状態になったり、亡くなってしまったりすれば、たちまち子どもの生活は立ち行かなくなってしまう危険性をはらんでいる。