5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…#28Photo:kyotokushige/gettyimages

投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。では、その実力に即した配当額とはいかほどなのか。今回、さまざまな経営指標から、独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額との差をランキングにした。特集『5年後の業界地図2025-2030 序列・年収・就職・株価…』の#28では、医薬品業界29社の理論配当額との乖離額ランキングを公開する。(ダイヤモンド編集部 山本 輝)

医薬品業界で本当の高配当企業は?
“妥当な配当額”との差を独自推計

 投資家にとって、企業の配当額は投資判断に直結する大きな指標だ。ガバナンス改革などを背景に、株主還元を意識する企業が増えており、累進配当の導入や配当性向アップなどをアピールする事例も増加している。

 一方で、配当額は企業の資本政策にも左右されるため、必ずしも企業の“実力”通りに配当が実施されるとは限らない。配当よりも成長投資を優先する企業や、内部留保の確保を重視する企業も存在するためだ。

 では、それぞれの企業の配当額の“実力”とはどれくらいなのか。そこで今回、純利益やPBR(株価純資産倍率)といったさまざまな経営指標を基に、重回帰分析によって独自に各社の「理論配当額」を推計。実際の配当額がどれくらい上回っているのかを算出し、その乖離額をランキングにした。

 この理論配当額は、同じような企業規模や“スペック”の企業の水準を考慮した、ある意味「妥当な配当額」とも呼べるものだ。ランキングを見れば、単純な配当性向の比較だけでは分からない、企業のスペックに対して配当を多めに出しているといえる「本当の高配当企業」の存在がくっきりと浮かび上がる。

 一方で、乖離額がマイナス、つまり理論値よりも配当額が低い「配当出し渋り企業」の存在も浮き彫りとなる。だが、それは裏を返せば「配当ポテンシャルの高い企業」と見ることもできる。企業の方針変更次第では、それだけ配当を増やす“余力”があると考えられるからだ。

 では、理論配当額との差が大きい企業はどこなのか。今回は、医薬品業界29社のランキングを紹介していこう。

 医薬品業界は個別性が強い業界だ。画期的な新薬を開発すれば業績を飛躍的に伸ばすことができる一方で、大型製品の特許が切れることで業績が大幅に落ちる「パテントクリフ」のリスクを常に抱えている。実際、この10年は革新的な新薬を開発した中外製薬や第一三共が躍進し、かつて圧倒的王者だった武田薬品工業を時価総額で抜き去った。株主還元も新薬開発のための投資とのバランスが求められる側面もある。

 そうした医薬品業界の中で、配当が手厚いといえるのはどの企業なのか。武田薬品、中外製薬、第一三共、アステラス製薬、大塚ホールディングス(HD)、塩野義製薬、エーザイ、小野薬品工業、協和キリン、参天製薬、ツムラ、日本新薬、ロート製薬、久光製薬……。その結果をランキングでチェックしていこう。

 また、ランキングでは、アナリスト予想を基にした3期後の配当性向も掲載している。これを見れば、配当がどの方向で推移しそうかもチェック可能だ。次ページで、その詳細を公開する。