職場での、何気ない “プチフィードバック”が理想
「情報通知」と「立て直し」――このふたつの要素を踏まえたうえで、さらに4つのステップを知っておくと、フィードバックをより効果的に行うことができると中原教授は説く。
4つのステップは、「場の設定」「事実通知」「腹落とし対話」「行動計画+期待通知」だ。最初のステップである「場の設定」のポイントは何か?
中原 まず、「人前では伝えない」ことです。「ポジティブなことなら、みんなの前で言ってもいいだろう」と、公の場で褒める上司がいますが、本人が周りから妬みをかったり、萎縮したりすることもあります。基本は1対1。しかし、いまの時代、密室だとハラスメントととらえられてしまうこともありますから、開放的な場でのフィードバックが適切です。もちろん、面談のようにかしこまった場で伝えるケースもありますが、日常的に声をかけてあげることが大切です。たとえば、職場のどこかで会ったときに「この間のプレゼンよかったよ」と、さらっと伝えていく――そんな“プチフィードバック”が理想です。
「事実通知」「腹落とし対話」「行動計画+期待通知」――フィードバックを行う際に、さらに気をつけておきたいことは……。
中原 先ほどお話しした「SBI情報」をなるべく具体的に話すとよいでしょう。そして、具体的に伝えつつも、決めつけないようにします。「こう見えるよ」「こんなふうに感じるけど……」と話し、「それについてどう思う?」と、最後は相手にボールを渡して、そこから、「対話」をしていきます。相手の受け答えに対し、「わたしはこう思うけど、あなたはどう思う?」と、キャッチボールを続けるのです。ボールを手渡してからの対話が重要になります。部下と向き合ったときに、自分ばかり話している上司もいますが、「(相手を)待てない」から、そうなるのです。「間が空いた」と思って、ついしゃべってしまうので、結果、自分だけがずっとしゃべっている状態になってしまう。相手に話してもらうためには、いったん待ちましょう。
また、フィードバックは、タイムリーに伝えることを心がけたいです。「即時フィードバックの原理」と、私は言っていますが、時間が経ってしまってから話しても、本人はあまり覚えてなくて、胸に響かないからです。
フィードバックの数をしぼることもポイントです。相手が受け取れるのは、多くて3つと考えてください。いろいろなことを言いたいでしょうが、相手からすれば、3つでも多いかもしれません。

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ダイヤモンドHRD総研(2025年1月配信)
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