トランプ関税で厳しさ増す
世界の自動車メーカー

 トランプ関税は、世界経済の主要分野に大きなインパクトを与える。特に、主要国の基幹産業である自動車分野に重大な影響を与えることは間違いない。関税率の引き上げに伴うコストアップで、日米欧で主要自動車メーカーの優劣は鮮明化している。

 トランプ大統領は、関税を引き上げることで対米投資を増やし、製造業復興を目指している。しかし、自動車のように部品点数の多い組み立て型の産業では、部品を海外から調達するケースが多い。それは米国のメーカーでも同じことだ。

 また、主要メーカーの多くは生産拠点を海外に展開しており、米国の関税率上昇は重大な影響を与える。主要メーカーの決算内容を見ると、米国メーカーは経営体力を喪失し始めていることが分かる。今年4~6月期、GMの最終利益は前年同期比35%減の18億9500万ドル(約2800億円)だった。

 同社は、新車販売の約半分をメキシコや韓国から輸入し、部品はわが国企業からの調達も多い。関税引き上げの影響によってGMのコストは上昇し、収益力の低下は深刻だ。同じ期、フォードも最終赤字に陥った。米国内でGMとフォードは人員削減や電動車戦略の見直しを余儀なくされる可能性が高い。全米自動車労組(UAW)は経営陣を批判し、トランプ大統領の支持率に影響するだろう。

 欧州では、旧クライスラーを傘下に持つステランティスが厳しい。今年上半期、関税による収益押し下げは3億ユーロ(約510億円)、下半期は約12億ユーロ(約2040億円)に増加する見通しだ。ステランティスは米国でのモデル投入が遅れ、GMやフォード以上に収益力の低下は深刻との見方が多い。

 ドイツでは、フォルクスワーゲンの業績悪化が鮮明だ。1~6月期、トランプ関税の影響で13億ユーロ(約2200億円)の損失が発生した。米国での新車販売の約8割を米国外から輸入していることが裏目に出た。同社は、中国でも価格競争に巻き込まれている。メルセデス・ベンツグループも関税と中国不振で業績悪化は鮮明だ。

 わが国では、主要拠点の一つである追浜工場の閉鎖を発表した日産が心配だ。また、マツダは米国販売の約8割を、国内やメキシコからの輸出でカバーしており、業績懸念は高いだろう。さらに、ホンダも電動化戦略のつまずきなど、業績の不透明感は高い。

 対照的に、トヨタは今年の世界生産台数(レクサスを含む)を約1000万台としており、今のところ意気軒高だ。1月の計画(992万台)を上回る。米中をはじめ地産地消体制によるリスク分散と、米国で人気が高いハイブリッド車(HV)の新モデル投入がワークした。