「満洲に生業を有し家庭を有するもの並に希望者は満洲に止まって貴軍の経営に協力せしめ其他は逐次内地に帰還せしめられ度いと存じます 右帰還迄の間に於きましては極力貴軍の経営に協力する如く御使ひ願ひ度いと思ひます」
「貴軍の経営」とはソ連軍による満州の運営を指す。将兵の中の「数万の満洲在籍者」を元の職場の炭鉱や電力・製鉄会社、南満州鉄道などに復帰させれば「食糧、交通一般産業の運営に相当役立つ」と売り込んでいる。
この「満州残留希望」は8月21日に開かれた関東軍参謀部の会合記録でさらに明確に打ち出されている。
一 居留民及疎開民ノ処理(第四課)全般ノ趣旨ハ成ルヘク大陸ニオケル民族再興ノ素地ヲ残ス他ハ内地ニ還送ス

二 1、武装解除後ノ軍人ノ処理(第一課編動班、人事班)全般ノ趣旨ハ希望者ハナルヘク大陸ニ其他ハ内地ニ帰還セシム 2、兵ハ現地ニ於イテ招集解除若シクハ除隊セシメ在満ノ在郷軍人及在満徴集現役兵ハ努メテ満州ノ原職場ニ復帰セシム
三、開拓団ハ全員努メテ原開拓団ニ帰還開拓ニ従事セシム
つまり関東軍の狙いは「民族再興」のため、満州にできるだけ多くの軍人・居留民を残すことだ。その背景について元大本営対ソ作戦参謀、朝枝繁春が言う。
「日本の4つの島に押し込められては経済再建ができない。再起には資源がある大陸に、たとえ国籍を変えてもかじりついていることが大事だと考えた。邦人が残れば、拠点にして盛り返せると思った」