BPSD予測マップは、アルツハイマー型認知症のほか、血管性認知症、レビー小体型認知症など4つの認知症ごとに症状と調査データが示されている。ネット上にも公開されているので、参考になるはずだ。
また、アジテーションは認知症の症状のなかでも本人のみならず、家族や介護者にとっても大きな負担になる、と繁信氏は話す。
「とくに母と娘の場合、遠慮がない関係性なので摩擦が生じやすく、お子さんが『さっき言ったでしょ!』『同じ話をしないで』など、きつい言葉をかけてしまいがちです。一方の認知症の方は初めて話した内容だと思っているので不服に感じ、不機嫌さや怒りっぽさとしてあらわれるケースも。介護疲れの要因になります」
家族の負の感情を「写し鏡」のように反映するのも、アジテーションの特徴。その結果、双方のストレスが悪循環を生み、“共倒れ”のリスクにつながることもあるという。
アジテーションの原因を探り
一つずつ解消するのが最優先
高齢の親にアジテーションと思われる症状があらわれたとき、周囲の人々はどのように対応すべきだろうか。
「焦燥感やイライラの原因を探るのが先決です。すでに認知症という診断が出ているなら、かかりつけの医師に相談して体の不調や違和感の有無を調べましょう。便秘や耳あかの詰まり以外にも、長年飲んでいる薬の副作用が体に悪影響を及ぼしているケースも多いです。先にも触れたようにご家族のいら立ちが本人に伝わり、怒りっぽくなっている可能性もあります。さまざまな観点で原因を調べてください」
認知症と診断されていなくても、以前よりも物忘れやイライラなどの症状が出ているなら「一度認知症の検査を受けてほしい」と繁信氏。
「認知症と診断されるのが怖いという気持ちもわかりますが、診断が出たことでアジテーションの症状が落ち着く人も多くいます。不安や焦燥感の正体が判明すると安心感が得られるようです。また、ご家族や周囲の人々も本人のイライラは病気が原因とわかると、穏やかな接し方に変わることもあります」