認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

近い将来、高齢者の5人に1人が認知症になるといわれている。認知症の介護に追われる家族も、今後さらに増えていくだろう。認知症の介護をする中で、特に家族が困惑するのは、もともと温和だった人柄が発症後に頑固で疑り深く、まるで別人のように変化することだという。『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』(すばる舎)の著者、藤原るか氏と坂本孝輔氏に、認知症がもたらす「かたくなさ」の実態と対応について、話を聞いた。(清談社 吉岡 暁)

認知症の人が
かたくなになる理由

 日本は「認知症大国」といわれている。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、65歳以上の認知症患者数は2020年に約602万人で、25年には約675万人と、5.4人に1人程度が認知症になる計算だ。高齢化が急速に進む日本で、認知症とその介護は、誰もが自分事として考える必要のある深刻な問題といえる。

 とはいえ、ある日突然、家族が認知症を発症したら、症状を理解して寄り添うことは簡単ではない。特に認知症患者の「介護拒否」に手を焼く家族は少なくないようだ。

「たとえば、妙なことにこだわって聞く耳を持たなかったり、手伝おうとしても拒否されたり、一度機嫌を損ねたらなかなか直らないなど、認知症介護ではもっと素直になってくれればと感じる場面に必ず直面します。認知症の人の『かたくなさ』が介護のハードルを上げており、家族であってもイライラや衝突が絶えないという話もよく聞きます」

 そう話すのは、『認知症の人の「かたくなな気持ち」が驚くほどすーっと穏やかになる接し方』(すばる舎)の著者で、認知症介護指導者の坂本孝輔さんだ。一般的に認知症といえば「物忘れ」や「徘徊(はいかい)」などが症状として挙げられるが、初期の介護では、この意固地な態度に対応することが、難しいのだという。

「介護保険の申請をしようとしても『困っていない』と本人に断られる、訪問介護を追い返す、忘れないようにと貼っておいたメモをすぐはがしてしまう……こんなふうに、周りから見たら明らかに必要な手助けやアドバイスを、認知症である当人が断固として受け入れてくれないケースが、とても多いのです」

 認知症ゆえにできないことが増えるのは理解できても、発症前とは別人のように疑り深く頑固になった姿に、戸惑う家族は少なくない。介護でイライラしたときは、その「かたくなさ」の正体を理解することが大事だと坂本氏は言う。