人気ゼロの時こそ
投資するチャンス!
――過去、実際に売買した銘柄を教えてください。
ゴドウィン 典型的な例が川崎重工です。投資を検討した当時、この会社は二つの逆風にさらされていました。一つは世界的にESG(環境・社会・ガバナンス)投資の流れがあり、防衛関連銘柄として不人気だったこと。もう一つは、新型コロナの影響で世界中の飛行機が飛ばなくなり、収益の柱である航空機エンジン事業が大打撃を受けたことです。市場では投資対象としての魅力が薄れ、株価が下落していました。
しかし、私たちは長期的な視点で分析します。「5年後に世界から飛行機はなくなっているだろうか?いや、飛んでいるはずだ」と。短期的な回復のタイミングは読めませんが、5年という時間軸で考えれば、航空機市場は回復している可能性が高い。そう判断して、極端に安くなっていた川崎重工に投資しました。その後の株価上昇はご存じの通りです。
――お見事ですね。もう一社、実例を教えていただけますか。
ゴドウィン はい、リンテックという企業です。半導体の製造工程で使われる特殊テープで高い世界シェアを持っています。この事業は半導体サイクルの影響を大きく受けるため、業績の波が激しい。サイクルが悪化すると業績も株価も大きく落ち込みますが、私たちにとってはそこが絶好の買い場となります。
サイクルがいつ回復するかを当てるのではなく、サイクルを通じて平均的にどれくらいの利益を生み出せるかを分析し、現在の株価が割安だと判断すれば投資します。この銘柄は、価格変動のタイミングを見極めながら、適切な局面で売買を行ってきました。
――現在はシンガポールを拠点にされています。日本にいないことが、日本株運用で不利になることはないのでしょうか?
ゴドウィン 全く関係ありません。25年前に私がこの仕事を始めた頃は、情報を得るために企業を訪問するしかありませんでした。しかし今は時代が違います。小さな会社でも詳細な情報をウェブサイトで公開していますし、コロナ禍を経てオンライン取材も当たり前になりました。機関投資家から取材要請があれば、企業側も喜んで応じてくれます。
もちろん、実際に日本に来て、街の雰囲気や消費動向を肌で感じることも重要ですが、それは年に数回の出張で十分。日々の情報収集や企業分析は、どこにいても可能です。
少子高齢化こそが
日本企業の起爆剤に
――ところで、今後の日本株市場をどう見ていますか?
ゴドウィン 今後5~10年は、日本株市場を非常に強気に見ています。最大の理由は、人口動態の変化が企業の構造改革を後押しすると考えているからです。
多くの人は、日本の人口減少と高齢化をネガティブに捉えますが、私はむしろ企業にとって大きな刺激になると考えています。かつてのデフレ時代は、日本企業は従業員の雇用を守ることを最優先とし、株主還元は二の次でした。しかし、人手不足が深刻化する今は状況が全く違います。
――少子高齢化が追い風に? もう少し詳しく聞かせてください。
ゴドウィン 労働力が不足しているからこそ、企業は生産性を上げるための設備投資やDX(デジタル改革)を進めざるを得ません。また日本企業が苦手としてきたM&Aによる業界再編も活発化し、非効率な事業からの撤退や売却もやりやすくなっています。さらに年金生活を送る高齢者が増えることで、増配など株主還元を求める声が強まっています。加えて、東証改革やアクティビスト(モノ言う株主)の台頭もあります。
日本企業は今、労働力不足と株式市場からの圧力という両面から、変わらざるを得ない状況に置かれています。
――東証改革などもあり、とくに大手企業は資本効率の改善が進みました。
ゴドウィン 中小型株は、これまで改革が遅れていた分、変化による「伸びしろ」が大きい。大手企業以上に、構造改革の余地が多く、そこに投資チャンスがあります。
日本のGDP全体は大きく伸びないかもしれません。しかし、個々の企業が非効率な部分を改善していくことで、企業収益と株価は大きく伸びる可能性があります。
◆日本中小型株部門 優秀賞
「イーストスプリング・ジャパン中小型厳選バリュー株ファンド」とは
長期的な視点で運用しているからこそ、短期的な株価の下落を投資チャンスととらえ、積極的に買う逆バリ戦略が奏功している。2024年12月末までの5年間の上昇率は+84.8%と、中小型株指数(Russell/Nomura中小型株)を19.2ポイントも上回り、3年の運用成績ではトップだった。現在はシンガポール拠点とはいえ、ゴドウィンさんの日本在住経験と日本への理解の深さも、好成績に寄与しているようだ。
ダイヤモンド・ザイでは1年に1回、「NISAで買える本当にイイ投資信託」を部門別にランキングし、上位のファンドを表彰している。人気や知名度ではなく、データを最重視した完全実力主義のアワードだ。「1.どれだけ上がったか(上昇率)、2.どんな時も下がらない(下がりにくさ)、3.ずっと優等生(成績の安定度)」の3つの独自基準で評価を行う。また、非常に人気があり多くのお金を集めているにもかかわらず成績が振るわない投資信託も、「もっとがんばりま賞」として発表している。
<ダイヤモンド・ザイNISA投信グランプリ2025>
[2025年]受賞投資信託30本一覧
▼日本株総合部門
▼日本中小型株部門
▼米国株部門
▼世界株部門
▼新興国株部門
▼リート部門
▼フレッシャー賞
▼もっとがんばりま賞
▼(番外編)インデックス型「最安ランキング」
▼当グランプリの「選定基準」はこちら⇒https://diamond.jp/articles/-/363017