民主党の支持母体とされてきた黒人や移民、とりわけラテン系の移民の票の多くが、トランプに流れたのだ。
自分の暮らしを守るために
移民政策を拒んだ“移民”たち
PBS(編集部注/アメリカの非営利公共放送ネットワーク)の調査によれば、トランプは、ラテン系の43%の票を獲得した。これは、前回選挙より8ポイント多い。ラテン系男性に限れば、トランプに投票した者の比率は48%にもなる。つまり、ほぼ半数のラテン系男性がトランプを支持したのだ。
これでは、民主党の大統領候補が勝てるわけがない、と思わせる数字である。
今回、ラテン系住民のかなりの人数が、ハリスではなくトランプに投票した直接の動機に関しては、簡単に推測できる。
彼らはすでに、苦労してアメリカの中で自分の居場所を確保した人たちである。もっとたくさん移民に来てほしい、ライバルを増やしたいとは思っていない。彼らの関心は、自分自身や自分の家族の幸福である。
アメリカを、移民をたくさん迎える多様性のある国家にしたいと思っているわけではない。ならば、さらに移民を迎え入れることに寛大な民主党候補に投票する理由はない。
この推論は一定の説明力はあるが、しかし、なお疑問を残す。それならば、どうして、今回の、2024年の選挙において、とりわけ、移民たちは、自己利益の方を優先させたのだろうか。この点がまだ十分に説明されていないからだ。
どうしてカマラ・ハリスは勝てなかったのか?
バイデンの経済運営は
順調だったのになぜ負けた?
最初に、CNNビジネスのエディター、デイヴィッド・ゴールドマンに従って、しばしば言われていることを退けておこう。「しばしば言われていること」とは、民主党の敗因は、経済にあった、という主張である。
ゴールドマンは、選挙結果をもたらした原因を、アメリカ経済の悪化に求めるなど、まったくの愚の骨頂であると、この主張を一蹴している。事実、所得を含む主要な経済指標はすべて、バイデン政権のもとで良好・順調である。
バイデンの経済政策は、おおむね成功している、と評価できる。唯一、厳しかったのはインフレで、これはとりわけ貧しい層の生活を直撃したはずだが、しかし、インフレも、選挙の頃には収まってきていた。