本稿冒頭に触れたRIZINは2015年に設立されたが、スタートダッシュを充実させたことでのちの人気を確保することに成功した。往年のレジェンド選手の復活や新世代のスター選手のプッシュがあり、旗揚げ興行にあたる年末の大会をフジテレビのゴールデンタイムに放送したのだった。

 やがてSNSでの発信力が強まってくる(YouTubeの台頭)と格闘技界も少し様子が変わる。ネット媒体の使い方のうまさや自己プロデュース能力の高い選手個人や団体が人気を集めるようになったのであった。人気を測る主要なバロメーターに「動画の再生数」と「PPV数」が加わった。

あまりに暴力的で現実離れ

 国内で最近盛り上がっている格闘技団体のBreaking Downは格闘家でユーチューバーの朝倉未来が主宰するもので、これがSNSを中心に盛り上がっている。従来の格闘技団体に比べて格闘技というスポーツというより路上のケンカ感が、出場する選手は選手というより街の不良感が強い見せ方になっている。

 筆者も関連動画を視聴することがあるが、初めて見た時の衝撃たるやすさまじく、いわゆるヤカラのような人らが試合でもなんでもない場所で初対面で出合い頭にいきなり殴りかかり、コルァ、オルァなどと絶叫しながらもみ合いになるのがお約束になっている。

 ケンカ漫画やヤクザ映画に見られる暴力要素のような、エンタメとしてすっきり整理された感じがまったくなく、グダつき生々しく収拾のつかない混沌ぶりがリアルの路上のケンカの雰囲気をよく映し出している。

 あまりにも暴力的な世界であり現実離れしているのだが、かえってその非現実感がモニターを通してみるとエンタメとして実にいい塩梅で仕上がっているのであった。

 アマチュアや準プロなどの選手も多いこのBreaking Downは生粋の格闘技ファンの目には邪道に映って「格闘技にあらず」という議論も出ているようだが、地下格闘技(アマチュア主催の格闘技)方面にスポットライトを当てた点や、当今の格闘技人気の一角を担っている点を評価する声もある。

 なおBreaking Downで実力を発揮した選手はRIZIN出場の機会を得ることがあるようで、RIZINが不良たちから「つえぇやつらの集まり」的に一目置かれるようになっている向きもある。RIZINは競技志向、Breaking Downはエンタメ志向とすみわけが明確で、うまく共存を図っていっている。