試合前から始まる「煽り合い」
試合の見どころもやや変わってきている。K-1やPRIDEでは「技術と能力がしのぎあってどっちが勝つか」というところが注目されるポイントだったが、最近は試合に至るまでの選手同士の「因縁」が大きな見どころになっている。インスタントな「因縁」は試合前の煽り合い、ヘビーな「因縁」は長期間にわたる煽り合いである。
基本的にこれはその界隈で「因縁」や「ストーリー」とキレイに表現されがちだが、実際に行われていることはその多くが煽り合い罵り合いで、これが視聴者のアドレナリンを刺激して人気を集めている。
大会最大動員数を記録した昨年の超RIZIN.3でメインイベントとなった朝倉未来vs. 平本蓮において、2人はその対戦が決定するはるか数年前からSNSやインタビューを通じて舌戦を繰り広げていた。
そうしたやり取りをファンはSNSでまざまざと追えるので、「これだけいがみ合っている2人が試合をしたらどっちが勝つのか」「とりあえず拳で決着をつけてほしい」と、その対戦カードへの興味が際限なく膨らんでいくのであった。
かつてボクシングの亀田一家は対戦前の相手を挑発するのが通例で、賛否はあったが確実に話題を呼んではいた。
ボクシングは格闘技の中でも比較的スポーツ寄りのテイストなので品のよろしくない行為は全体としては歓迎されない傾向だが、不良テイストを含む格闘技団体では挑発があまりにも当たり前に行われていて、時に「おれとお前(対戦相手)でストーリー(因縁)を作って試合を盛り上げていこうぜ」的な前提で、挑発が「思慮を含んでいて大義もある良きもの」という文脈で用いられたりしている。
そういうところで見る挑発はエンタメとして受け入れる準備が視聴者側ですでに整っているためか、嫌な感じが薄れているから、エンタメとは実に奥が深い。
筆者は格闘技においては完全にライト層で、テレビでK-1をやっていた時代はそれを見ていたし、テレビでやらなくなったら見なくなり、今また盛り上がっている格闘技界隈をYouTubeなどでつまみ見るようになったノンポリの一般ピープルである。だがやはりNetflixでは『サンクチュアリ』(相撲)も『極悪女王』(女子プロレス)も面白かったし、格闘技とその裏舞台には人を引き付ける何かがある。
この度の格闘技ブーム再燃を受けてこれまでの盛衰を調べてみたら結構ドラマティックで面白かったのでこうして記事にまとめてみた次第である。お盆休みの余暇の過ごし方として格闘技のネット観戦も面白いかもしれない。