実際に、戦争を裁く国際裁判所の歴史は、東京の後もいくつかの一時的に紛争を裁く国際裁判所が設立(たとえば、ユーゴスアビア紛争を裁く旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷など)されたあと、2002年にオランダのハーグに「ICC(国際刑事裁判所)」が設立され、ついに「人は戦争を裁くことができる」段階に達したか、と思われた。

 このICCについては、ドラマの最後の最後、現代につながるその後の世界の状況を字幕テロップで表現した中で、私は次のような文言で締めくくった。

東京裁判終結から50年後の1998年
120か国が 国際刑事裁判所(ICC)の
設立を定めた規程を採択
4年後 ICCはオランダに開設された

しかしアメリカやロシア、中国が加盟しておらず
ICCは本来の役割を果たしていないという声も強い

世界では今も 戦乱や紛争が続いている

 ICCについては、最近、ニュースなどで話題になることが多いので読者の皆さんも見聞きしているだろう。1つは、ロシアのプーチン大統領ら、そしてイスラエルのネタニヤフ首相らとハマスの幹部たちなど、今まさに国際政治の中心にあって事態が進行している紛争の関係者に逮捕状を出したことだ。
     
 そしてそのICCの所長に昨年3月に任命されたのが日本の元検事である赤根智子氏であることだ。
     
 赤根氏が最近出された著書「戦争犯罪と闘う」(文春新書)でも書いているように、ICCの活動の源流は東京裁判にあり、その判事11人は赤根氏の大先輩たちだ。日本のジャーナリズムなどでは、ICCこそが平和の番人であり、それを全面的に後押しすることこそ、日本の政策であるべきだ、といった論調、またICCに敵対的ともいえるトランプ政権や、ましてや逮捕状を出されたプーチン大統領を徹底批判する論調も多い。

 しかし、それはそれとして、私は上述の「番組末尾のテロップ」にも書いたように、ICCの現状が戦争を裁くにはまだまだ不十分であり、解決しなくてはならない問題点が数多くある、と考えている。そのすべてを論ずるのは別の機会に譲り、ここでは深入りしないが、次のようなことは言えるだろう。