成長に向けてM&Aを連発!
独自戦略の狙いとは?

 オイシックス・ラ・大地は、ほかの21世紀企業同様に、デジタル時代の申し子である。Eコマースを主戦場とし、デジタル技術を駆使して、需要と供給を無駄なくつなぐ。データアナリティクスやAIもフルに使いこなしている。

 しかし、デジタル技術はあくまで手段の一つでしかない。自社の未実現のパーパスにこだわり、未顧客の声に耳を傾け、新しい産業構造を構想し、それを着実に実践していくことこそが、イノベーションの源泉となる。DXのD(デジタル技術)に踊らされるのではなく、X(変革)を目指してDを使いこなす姿勢は、シン日本流経営にとって多くの学びがある。

 オイシックス・ラ・大地の進化を支える2つ目の経営手法が、M&Aである。同社は多層的なM&Aによってスケールアップを続けてきた。

 2024年にはシダックスに続き、キッチンレス社員食堂事業(セントラルキッチンでつくった料理を、キッチン設備のないオフィスへ運んで、現地で温めて提供する社食事業)を展開するノンピ、旬八青果店を起点としたSPF事業(仕入・物流・製造・販売事業)、HR(ヒューマンリソース)事業、PR地域活性事業を展開するアグリゲートを次々と買収。
 
 海外では、子会社フューチャーフードファンド(Future Food Fund)が運営するコーポレートベンチャーキャピタルを通じて、フードテック領域に投資を広げている。たとえば、2022年にはAKORN Technology, Inc.(アメリカ・カリフォルニア州)に投資。同社は、アップサイクルされた非遺伝子組換のとうもろこしなど、植物由来の原材料を用いたコーティング技術を開発・提供するスタートアップ企業だ。

 なぜM&Aをしてまで成長したいのかと、先の対談の中で尋ねたところ、高島氏は次のように語った。

「私たちにとって、事業規模は『食の社会課題の解決がこれだけ進んだ』と示す尺度にほかなりません。いまの事業規模は1000億円を少し超えた程度ですから、その分だけ進んだわけですが、それでも解決できない食の社会課題はまだ世界に山ほどありますから。むしろ、『もっと速く成長できないものか?』と、オイシックスの成長の遅さに、私は創業以来イライラし続けています」

 大きな社会課題の解決が目的、M&Aはその手段にすぎない。この飽くなきスケール化のドライブは、従来の日本流経営に決定的に欠けていたものである。イノベーションを成長エンジンとし、M&Aによって非連続なスケールアップを実現していく。ここにも、シン日本流経営を構想するうえで、重要なヒントが潜んでいる。