頭の中でそのワードを唱えても気持ちが落ち着かないなら、声に出してもいいでしょう。ただ、街中でいきなり「ふわふわ」なんてしゃべりだしたら、周囲の人に気味悪がられるかもしれませんが(笑)。深呼吸する、水を飲むなどの行動もそれをする間に少し時間が過ぎますし、リラックスをするためにも効果的です。

 こんなふうに自分なりのルールや習慣をもっていれば、感情をコントロールするのに役立つと思います。

 また、「べき思考」が減ってくれば、そもそも怒りが湧きにくくなります

 たとえば、あなたの仕事がお店での顧客対応だとします。お店に来るお客さんは、お金に余裕のある人からお金がない人まで、バックグラウンドはさまざまです。

 お金のない人が商品を買おうとしているときは、あれこれ聞いてくるかもしれません。それに対して「そんなことをいちいち聞くべきじゃない」とイライラし、その怒りを顔や態度に出してしまえばトラブルになることもあるでしょう。

 一方、相手はお金がないのに必死の思いで買おうとしていることが想像できれば、「買い物に失敗するわけにはいかないから、これだけいろいろ聞いてくるのも仕方ないよな」と思えます。「聞くべきじゃない」という「べき」が消えて、「仕方ないか」と思えるので、そもそも怒りが湧かなくなるというわけです。

怒りは誰にでもあるからこそ
出す場所と方法が重要!

 さて、こうしたお話をしている僕はさぞ上手に怒りとつき合っているのだろうと思われるかもしれません。

 でも安心してください。僕もイライラすること、めちゃくちゃあります(笑)。

 しんどいときは怒りが出やすくなるので、僕も当直明けで打ち合わせなどをしていると、嫌な態度をとってしまって「藤野先生、今日は機嫌が悪いな」と思われていることがあるかもしれません。

 僕だって人間ですから、当然、怒りの感情はあります。ただ、それをどこで出すのが効果的かを常に考えています

 僕がメディアで怒りの感情を出したとしても、いいことなんてたぶん1つもない。だから出さないように気をつけているだけです。

 僕たち精神科医でもイライラしたり怒ったりすることが多々あることを、むしろ皆さんに知っておいてほしいと思います。