ですが、教職者というものは生徒の人生を預かっているわけですから、生徒になにかあったときには時間外労働だろうが、緊急出動する覚悟が必要な職業だと思っています。

 しかし、ユニオンによって「ブラック企業」とされたことで、ホワイトな環境だけを求め、生徒よりも自分の人生が常に大事と考えるような教職員が入ってくるケースが、多少は減るかもしれません。

N高が行っている
「シングルマザー採用」

 採用に関連して、「シングルマザー採用」についても触れておきましょう。

 N高ではコロナ以前からリモートワークを導入していました。IT業界では、優秀なエンジニアを引き留めるために、特権としてリモートワークが提供されがちです。

 でも、リモートワークはどんな職種でもできるわけではありません。適した業務とそうでない業務があるのは、みなさんもおわかりでしょう。

 僕は、リモートワークをする権利は「したい人」ではなく、「リモートワークでしか働けない人」に優先的に提供するべきだと考えています。N高はもともとオンライン教育をおこなっているため、適した業務が数多く存在します。

 そこで、この「リモートワーク雇用枠」を世の中のシングルマザーの方々に優先して割り振って、働く機会を提供しようと考えました。このシングルマザー採用は約5年前、コロナ禍が始まる以前から進めており、現在では約50人がリモートワークをおこなっています。

 リモートワークでどうやって勤怠管理をするのか、サボったりしないかが不安だというのが、雇う側の視点でのリモートワーク普及の障害になります。

 N高のリモートワークでは、いろいろ試行錯誤した結果、Slackというチャットシステムで、リモートワークをしている社員が業務を逐次報告しながら作業するという方法で解決することにしました。

 別に監視している人がいるわけではありませんが、他のリモートワーク社員にも仕事内容が伝わっているという感覚がありますので、サボったりすることが難しくなります。仕事を開始したり休憩で中断したりする場合には、必ずSlackで、みんなに挨拶をするというルールにしました。この簡単な仕組みだけで、仕事とプライベートの気持ちのオンオフを切り替えられるのです。