日本文化が持つ「かわいい」の価値観は、世界的にも評価されています。ハローキティやポケモン、特にピカチュウなどは、まさにその一例です。その点でいえば、日本人は「かわいい」という生き方をもっと追求してもいいのかもしれません。
特に60代以降の方には、「かわいいおじいちゃん」「かわいいおばあちゃん」を目指して、自然体で魅力的に感じられる存在になってほしいのです。
ノーベル賞の小柴昌俊研究室は
笑いの絶えない場所だった
「かわいい大人」と言われても、プライドが邪魔してなかなかイメージがつかめないという方も多いかもしれません。
でも、僕の経験上、偉い人ほど実は「かわいい」人が多く、偉そうで威張っている方というのはあまりいません。そして、その魅力から、周囲の人をも巻き込んでしまうことが多いのです。
たとえば、僕が東大の理学部物理学科にいた頃、ニュートリノ研究でノーベル賞を受賞された小柴昌俊先生の近くの研究室で過ごしました。小柴先生はいつでも楽しいことを追求する子どものような明るさがある方でした。
そのせいでしょうか、小柴先生の研究室は、とにかく明るくて、いつもお祭りのような賑やかさがあったのです。
この研究室では超新星爆発などの素粒子実験から得られた膨大なデータを1年もかけて解析するのですが、研究員たちは皆コンピューターの達人。彼らは寝ているのか起きているのかわからないほど一日中データ解析に夢中で、いつでも忙しい。
にもかかわらず、いつもみんなが楽しそうだったのは、強く記憶に残っています。
また、かつて理化学研究所で半年ほど、人工知能の父と呼ばれる甘利俊一先生のもとで研究したことがあります。
甘利先生は日本を代表する数理工学者であり、AIや神経回路網理論の先駆者として国際的に高く評価されています。
そんな偉大な研究者でありながらも、みんなでお酒を飲んだ時、笑いながら「もっと飲もうよ」と周囲の研究者に気さくに声をかける温かい方です。