スマートフォンに手にするシニア写真はイメージです Photo:PIXTA

私たちは「AIを使いこなさなければ」と思いがちだが、実はその恩恵が最も大きいのは高齢世代かもしれない。かつて夢中になった趣味も、AIの力を借りればもう一度輝きを取り戻せるーーそう聞けば、あなたの頑固な親もAIを使いたくなるかもしれない。高齢者の人生を変える、AIの力とは?※本稿は、茂木健一郎『60歳からの脳の使い方』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。

AIの進化が高齢者の
可能性を拡げていく

 AIの活用による大きな変化といえば、年齢という壁が大きく下がり、誰もが自分らしい生活や学びを楽しめるようになる、ということが挙げられます。

 なぜそう言えるのか。年齢を重ねると、体力の衰えや判断力の低下などを理由に、社会活動においてさまざまな制限が課されがちです。しかし、AI技術の普及は、そうした年齢によるハードルを取り払ってくれる存在になると考えられるからです。

 たとえば、AIによる自動運転技術が進歩した場合、高齢者の暮らしは劇的に変わるでしょう。

 近年、高齢者による運転事故の増加を背景に、免許の自主返納を促す動きが広がっていますが、公共交通が十分に整備されていない地域に住む高齢者にとって、車の運転の有無は生活の質に直結します。

 地方に住む高齢者にとっては、運転免許を奪われるのは「家に引きこもっていろ」と言われたのと同義だという声も聞かれます。

 でも、AIを搭載した自動運転車が普及すれば、高齢者は安全かつ自由に移動できるようになり、地域社会とのつながりや自立した生活を維持できるはず。

 AIの恩恵は教育や学習の分野にも及びます。AIを活用した学習環境が整えば、自分の興味や理解度に応じた最適な学習プログラムを、年齢を問わず享受できるようになるでしょう。