これは、ひとつの感覚や動作に意識を集めることで、「ライバルの今日の調子は?」「失敗したらどうしよう」という雑念をシャットアウトする効果があります。

緊張や不安があっても
“今”この瞬間”に集中するには

 もうひとつの特徴は、ポジティブな自己対話(セルフトーク)を徹底していること。「大丈夫、できる」「自分は準備してきた」といった肯定的な言葉をくり返すことで、不安をはね返す力を高めているのです。

 これらは、アスリートだけに有効な方法ではありません。私たちの日常にも、プレゼンや商談、試験、発表会など、さまざまな“本番”があるものです。

 緊張して当然の場面では、心の準備があるかないかで、結果は大きく変わります。

書影『くよくよしたら手を洗おう。』(内藤誼人、主婦の友社)『くよくよしたら手を洗おう。』(内藤誼人、主婦の友社)

 たとえば大事な発表の前、うまくいった日の様子を思い出しながら、「今日は落ち着いて話せる」と声に出してみる。壇上に上がる前には、ゆっくり深呼吸をしながら、手の動きや足元の感覚に意識を向けてみる。これだけでも、不安にのまれず、“今”この瞬間”に集中しやすくなります。

 実際、アスリートのメンタルトレーニングの多くは、不安をなくすのではなく、「不安があっても集中できる状態をつくる」ことを目的としています。

 緊張してもいい。プレッシャーがあっても大丈夫。どう動くかを日ごろから準備しておくことが“強心臓”を育てる秘訣です。

「本番に弱い」「緊張すると頭が真っ白になる」と感じている人ほど、アスリートの心の使い方を取り入れてみてください。

 成功をイメージし、自分に声をかけ、体の感覚に意識を向ける。そんな小さな習慣が、いつしか大きな自信へと変わっていきます。