自宅のサウナが普及しても
公衆サウナが人気の理由

 サウナがもしフィンランドの社会を凝縮した空間であるとすると、一つだけこの考え方に当てはまらないことがあります。それはコミュニケーションの取り方です。

 フィンランド人はシャイで無口な人が多いので、基本的には道で知らない人に話しかけたり、電車が空いている時には知らない人の隣に座ったりしないのですが、サウナの中だと裸にかかわらず先客の隣に座って初めて会った人とも積極的に会話を楽しむことができ、シャイな性格が洋服と一緒にどこかに飛んで行ってしまうのではないかとすら感じます。これだけ自宅のサウナが普及していても、あえて公衆サウナに入りたい理由はここにあるのではないかと思います。

 サウナはフィンランド人にとってコミュニケーションツールなのです。

 普段は話しにくいことでもサウナの中だと話しやすくなることから家族やパートナーと大切な会話をしたり、サウナセラピーも行われています。セラピーは特に自分の気持ちをなかなか人に話しづらいフィンランド人男性に好評なようです。

 サウナの効果は人それぞれだと思いますが、スマホやラップトップを忘れて、情報や文字などの刺激の少ない空間で汗をかいて、心身をリセットすると、不思議なぐらい生まれ変わったような気持ちになれます。サウナあがりにおいしいご飯を食べられたなら、そのおいしさの相乗効果で、妹の言葉を借りれば「まるでミニホリデー!」