
正義感が強い人ほど自分こそ正しいと思い込み、結果的に評価や人間関係を損ねてしまいがちだ。職場でついカッとなって、後から「やり過ぎた」と後悔してももう遅い。実は、気持ちが暴走しそうになったとき、あることをすれば怒りは正しく表現できる。その具体的な方法をプロカウンセラーが解説。※本稿は、杉原保史『プロカウンセラーの賢く怒る技術』(創元社)の一部を抜粋・編集したものです。
どちらかが完全に正しいと
言い切れる争いはあるのか
激しく怒っているとき、人は自分が正しいと信じています。自分は正しくて、相手は間違っていると信じています。つまり、自分にこそ正義があると信じているのです。
しかし、自分が100パーセント正しく、相手は100パーセント間違っていることがあるでしょうか?
ポストモダン思想(編集部注/近代主義が追求した普遍性、客観性、合理性といった概念を批判し、多様性、相対主義、懐疑主義を強調する思想)が浸透し、多様な文化や価値観を尊重する現代社会において、いずれかが完全に正しく、いずれかが完全に間違いであるなどということがあるでしょうか。
あらゆる戦争は、正義の名の下に行われます。植民地支配は、保護や啓蒙の名の下に行われます。虐待はしつけの名の下に、テロは解放の名の下に、洗脳は救済の名の下に行われます。
こうした場合の正義、保護、啓蒙、しつけ、解放、救済などの美名は、明確な偽装の意図を持って用いられていることもあります。しかし、こうした行為に関わっている人たち自身が、本気でそのような美名を信じていることも多いのです。