蘭子、とんでもない人に出会う

 たかしのモデル・やなせたかしは、色っぽい女性の絵や、ボオ氏のようなちょっと洒落たものが好きだったようだ。要するに大人の鑑賞に耐えうるもの。だが、世の中はもっとわかりやすい甘くてポップなものを求めている。

 嵩が賞をとれるのは、選者が嵩の求めるものを理解できているからだ。同じ業界の人はその才能に一目置いても、なぜか読者に恵まれない作家はいつの時代もいる。

 手嶌と嵩とのぶが握手。このまま、嵩と手嶌のコラボエピソードに一気に進んでほしいのに、またまた蘭子と八木のエピソードが入ってくる。もう、ええて。こういう関係こそ、なんだか気になりながらも曖昧にしておいてほしい気が筆者はしている。たぶん、こういう湿度の高い恋愛パートが好物な人もいるだろうけれど。

 蘭子が八木の会社に来て、何かやりたいことがあるとお断りしている。ただ、生活があるから八木の仕事も請けるとか。整理すると、受賞祝いの日、八木に仕事を頼まれて受けたが、以前ほど積極的に請け負う気はない。ただ完全に仕事をしないわけではないということ。

 このズルズル感。仕事と私的感情が完全に混ざっていて、なんだかなあ。これ、いまをときめく河合優実だから、みんなねじ伏せられて見ているけれど、そうじゃなかったら、批判の声も増えていたのではないだろうか。知らんけど。

 会社の廊下に出る蘭子。また湿度の高いねっとりした演技を見せるのか、見たくないぞと思ったら、意外なポカンとした表情に。「ああ!」と思わず声を出す。

「蘭子はとんでもない人物と出会いました」(語り:林田理沙)

「とんでもない人物」のヒントは、その前の粕谷(田中俊介)の「下にパン業者の車が来てるぞ」というセリフであろう。

(※)日本銀行のホームページ https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/history/j12.htm

嵩が漫画大賞で再び賞金ゲット!→昭和42年「100万円」の価値は今いくら?【あんぱん第114回】