今年はマネジメントの父、ピーター・F・ドラッカー没後20年を迎えます。そのマネジメント論は現代でも深く息づいています。
「マネジメントの基礎を身につけたい」
「リーダーとして、どうメンバーに接したらいいのかわからない」
「管理職として仕事をしてきたけど、うまくいっていない気がする」
「ドラッカーは難しそうだから、今まで触れてこなかった」
そのような悩みを解決するヒントが詰まった書籍『かの光源氏がドラッカーをお読みになり、マネジメントをなさったら』が発売されます。本書は、これまでドラッカーを知らなかった人でも物語の中でその本質を学べる1冊です。
本記事では、著者の吉田麻子氏がドラッカーから学べることをストーリー形式で解説します。

トップ成績を誇るが、周囲を萎縮させる社員
「それじゃだめなんだよ!」
営業会議の場で、入社5年目の佐々木(仮名)は大きな声で言い放った。
「だから数字が取れないんだよ。俺ならこうやる」
会議室の空気が一気に張り詰める。
発言しかけた若手社員は口を閉じ、沈黙が訪れる。
他のメンバーは言いたいことがありそうにこちらを見る。
赤坂課長(仮名)はうなずいて見せる。
「佐々木、そういう言い方をするなと言っただろう」
そう言われても佐々木の表情は変わらない。
佐々木は社内でトップクラスの営業成績を誇る。理路整然としたプレゼン力と交渉力で契約を次々と勝ち取り、会社にとって大きな戦力となっていた。
しかしその一方で、彼のきつい口調や他人のアイディアを即座に否定する態度が、周囲を委縮させていた。
「仕事はできるけど、困ったやつだな……」
赤坂課長は胸の内でつぶやく。
「佐々木のおかげで売上は上がっている。しかし場の雰囲気を悪くし、若手社員を疲弊させているこの状況をどうすればよいのか」
おどおどした表情のメンバーたちを見て、赤坂課長は溜め息をついた。