日銀「早ければ12月利上げ」実現に必要な、高市首相とのコミュニケーションの“中身”Photo:SANKEI

日銀、6会合連続で追加利上げ見送り
“想定”が狂った高市政権誕生

 日本銀行は、10月29、30日の金融政策決定会合で、政策金利の据え置きを決めた。

 6会合連続での追加利上げ見送りとなったが、大方の予想通りだった。

 植田和男日銀総裁は、会合後の記者会見で、利上げを見送った理由として、2025年度~27年度の「経済・物価情勢の見通し(展望レポ―ト)」が実現する確度は少しずつ高まっているものの、トランプ関税が世界経済や日本企業の収益に与える影響を見極めたいことを挙げている。

 さらに、収益の動向によって企業の積極的な賃金設定行動が途切れることがないか、来年の春闘に向けての賃上げ動向を確認したいことも、政策金利を据え置いた理由として強調している。

 とはいえ、利上げを先送りして確認できる情報が増えたからといって、経済・物価情勢の先行きを完璧に見極めることは難しい。どの時点で判断してもそこには不確実性が伴うことになる。乱暴な言い方をすれば、仮に今回の会合で利上げを決めたとしても、それにふさわしい判断理由は用意できたはずだ。

 つまり、利上げするかしないかの決断が重要であって、理由は後からいかようにも付けられる。同時に、公には理由に挙げられないことが、政策判断の決め手になることもある。

 日銀が今回、利上げを見送った一番の理由は、安倍政治の継承や「積極財政・緩和維持」を掲げた高市早苗首相の誕生だろう。

 石破政権が続いていたら、利上げが決まっていた可能性がある。

 植田総裁と石破茂前首相は9月3日に会談している。植田総裁はそろそろ利上げを行う可能性があることを伝えていたはずだ。しかし、その4日後に石破首相が辞任を表明し、その後、高市首相が就任したことによって、首相と日銀総裁とのコミュニケーションは仕切り直しになってしまった。

 植田日銀にとって、高市新首相とのコミュニケーションをどう進めるかが、改めて利上げシナリオ実現の鍵になる。