分配金を毎月出す投資信託に資金が戻っている。2024年度上半期(4~9月)は4662億円の流入超だった。長期投資にそぐわないとして新NISA(少額投資非課税制度)の対象外となり前半期は流出超に転じていたが、退職世代の需要の根強さを示した。

 実はこの記事、2つの大事な事実を含んでいます。

 1つは、「新NISA」は、スタートした直後は、私のような「増やしながら引き出す」のを目的とした人間の不評を買っていた(したがって資金の流入はなかった)という経緯があります。

 他方で、その後(おそらくそんな状況に慌てた、もしくは憤慨した投信運用会社が)「毎月型ではないが、『隔月型』で分配金受け取りができる」商品の発売を開始しました。その結果、記事のような資金の流入が起き始めたのだと思います。

 ちなみに、この記事のサブタイトルには、「退職世代に需要」とありますが、本来ビジネスとして考えれば、金融資産の約6割を所有するといわれるこの世代を、取り込まないのは考えられません。

「需要に合った商品を提供すれば、必ず売れる」のは自明なのにもかかわらず、なぜそんな当たり前のことが、「新NISA」がスタートした直後には実現しなかったのかといえば、その理由も同記事の後半に記されています。

 毎月分配型投信には長期の資産形成には不向きだとの批判が多い。分配金の支払い原資は投資信託の資産であるため、分配金を支払うと資産は減り、複利効果を生かし切れない。

需要に応えていない「新NISA」に
見切りをつけた人たちも

 そもそも、「新・旧NISA」とも、本来の目的は「長期にわたる資産形成」にあるのだとすれば、本書で紹介しているような、「毎月」分配型の、しかも「受け取り」方式は、「複利での資産育成効果」には反します。

 ですから、今回の「新NISA」で外された理由も、正直、分からなくもありません。

 もちろん、たくさんの需要があるにもかかわらず「それに応えていない制度」ですから、長期にわたって増やし続けるよりは、むしろ生きている間に必要な額を受け取るのに躍起となっている退職世代には、あまり役に立たない制度だったといえます。

 それにもかかわらず、同記事では、2024年4~9月の国内公募投信の純流入ランキングの、上位5本のうち、2本が毎月分配型だったと報道され、私は驚いた記憶があります。