こうした話は以前にも何度か聞いたことがあり、「喜びより負担」という認識は根深い問題だとも感じていた。興味を抱き、後日、改めて男性に会い、話を聞いた。

 快く時間を割いてくれた男性によると、男性が親しくしている10人ほどの同期の友人のうち、結婚しているのは自身ぐらいだという。

 自身と同じ世代からは、今の社会で結婚したり、子どもを持ったりするには相応の「階級」であること、例えば、安定した職業に就いていること、などの条件を満たしていないと無理だ、といった思いを感じるのだという。

小学校の新入生の数は
前年比べて1割減

 中小企業に勤める友人からは、教員の男性に対してこんな言葉が漏れたこともある。

「お前は(待遇が安定した)公務員だから、結婚しても大丈夫だよな」

 話を聞きながら、記者にとっては複雑な思いながらも納得感があった。韓国社会で生きる若い世代の率直な思いの表れだとも思えた。

 男性は大学入試の時の連日の猛勉強などを思い返し、入試や就職などの人生の節目で激しい競争を強いられた経験を味わってほしくないという思いもあり、もともと、子どもを持つことに必ずしも積極的ではなかった。

 ただ、妻と楽しく結婚生活を過ごす中で、子どもが加わる日々を考えるようになった。妻と一緒に娘を育てる幸せな日々を過ごしつつ、2人目の子を持つことを検討していると話をしてくれた。

 ただそれは、教員という安定した職業に夫婦で就いているがゆえの「特権」なのかもしれない。男性はそんな思いも吐露した。

 勤務する小学校でも新入生の数は減っており、少子化の現実を実感している。ソウルでは、24年3月に小学校に入学する子どもの数は6万人弱になり、前年比で1割減っているのだという。

 子育てといえば、まずは「負担」のイメージが先に来てしまう…。男性から聞いた話を次の取材で会った女性(34)に、かいつまんで紹介してみた。

経済的なストレスを考え
結婚も出産も断念した女性

 地方出身で、いまはソウルに住む女性はすぐ、こんな反応を示した。

「ええ、とても共感しますね。私もそう思います」。結婚も出産も「そうしたいという気持ちが全くない」という。