イーロン・マスクが地球滅亡を危惧しているとすれば、マンガとしては別のアプローチもあります。地球温暖化を止めるために石油産業を支配することです。
石油産業は世界を動かす巨大産業です。アメリカのエクソンモービルやシェブロン、オランダのシェルなど上位10社の時価総額合計は3.28兆ドルです。
すべては無理にせよ、その3割を支配下におさめれば石油業界に対する影響力は絶大なものになります。なかでも世界最大の石油会社であるサウジアラムコは、時価総額1.56兆ドルとちょうどイーロン・マスクの個人資産で購入できそうです。
サウジアラビアもそもそも脱炭素時代に国家をどのように変えていくのかに高い関心を持っています。あくまでマンガの設定ですが、サウジの皇太子とイーロン・マスクががっちりと手を握れば、石油生産を大幅にスローダウンさせることでカーボンニュートラルを加速させつつ、巨大なアラビア半島を緑地に変えていくような超巨大プロジェクトを推進できる可能性がありそうです。
「使い切れない大金を手にしていったいどうするんだ」と言うのは所詮、日本人レベルの富豪の悩みです。世界最高の天才超富豪にとっては1兆ドルという想像もできない報酬は、それなりに使い道がありそうなインセンティブだと思われます。
テスラがマスク氏に課す
目標は「市場破壊」
さて、それにしてもなぜテスラの取締役会はここまでケタ外れの報酬をイーロン・マスクに提示するのでしょうか?ここからは、マンガではなく現実の世界の話として説明させてください。
会社としてのテスラには3つの経営問題が存在します。ひとつは欧米日の西側諸国でのEV需要の低迷。ふたつめにロボタクシーという新しいフロンティアの現実化と競争の激化。そして3つめが経営者のイーロン・マスクの気が散っていることです。
テスラ自身がアメリカ市場でのEVシェアで40%を割り込んでしまったこと自体も大問題ですが、それよりも深刻なのが3番目の話です。マスク氏はビジネスから政治に関心が移りアメリカの行政府の改革に力を入れたかと思うと、トランプ大統領と喧嘩をして、こんどは新党結成に動き始めています。