「揚げない唐揚げ」が売れる?
同じ商品なのに、なぜ?
話を聞く中で「それはなぜ?」と疑問が浮かんだら、遠慮せずに聞きましょう。会話の中で見つかる「なぜ」は、自分の頭の中だけでは見つからない貴重なものです。
また、時に話し手の潜在ニーズをあぶり出し、互いに「気づき」を共有することにもつながるはずです。
では、現場の担当者にヒアリングする場面を想定してみましょう。
「こちらの店舗では『揚げない唐揚げ』の売上が伸びていますね」
「ええ、昼の時間帯の動きがよくなっています。特に年配のお客様から『胃もたれしない』という声をいただいています」
「たしかに。でも、それって以前も変わらないと思いますが、なぜ最近になって売上がよいのですか?」
「実は、売り場のレイアウトを変えて『揚げない唐揚げ』を入口付近に置いたんです」
「なるほど。POPをつければ、さらに伸びるかもしれませんね。他店の指導で参考にしてみます」
「結構多い」と言われたら
具体的な回数を訊いてみる
こんなシチュエーションは、どうでしょうか。
「『結構多い』とおっしゃいますと、具体的に1日に何回くらい発生する作業ですか?」
「ええ、例えば、午前中だけで5回から6回は発生しますね」
「なるほど、午前中だけでも5回から6回の作業が発生するのですね。それぞれの作業にはどのくらいの時間がかかりますか?」
ここでは相手が話した「結構多い」という漠然とした表現に注目します。それを質問することで、「結構多い」を「午前中だけで5回から6回」という具体的な数値に置き換えられました。さらに作業の回数と時間について尋ねることで、話の内容がより具体的になっていきます。
質問のテクニックは
セールスでも活きる
相手に納得してもらうためには、質問の仕方が重要です。特に「どうして?」「なぜ?」といった理由を尋ねるフレーズを効果的に使うことで、相手の本音や潜在的なニーズを引き出しやすくなります。
例えば、車を買いに来た顧客に対する販売員の対応を見てみましょう。
(改ページ)7人乗りワゴンを求める客に、あえて5人乗りを勧める営業術
「ワゴン型で7人乗りぐらいのものを考えています」
「そうですか。(カタログを開きながら)それならいくつかございます。これらの車種ですね。機能や色など、ご希望はありますか?」
「まだ具体的に考えていなくて。この中から選ぶんですよね……」
*顧客は「ほかも見てから考えます」と言って帰ってしまった。
「ワゴン型で7人乗りぐらいのものを考えています」
「なるほど。それならいくつかございます。ところで、どうして7人乗りのワゴンをご希望されているのですか?」
「将来的に子供が増えたり、両親と同居したりすることを見越して大きい車がいいかなと」
「ちなみに、今のご家族は何人ですか?」
「私と妻の2人です」
「将来的にはご家族が増えるかもしれませんが、今のところは7人乗りより、足元の空間に余裕があってゆったり座れる5人乗りでもいいかもしれません。ご両親が乗られるなら、乗り降りがしやすいタイプの車もあります」「言われてみれば、5人乗りで十分ですね」
「では、5人乗りも含めて検討してみませんか」
*さらに相談を重ねることができ、購入の可能性も出てくる。
質問下手な人は、相手の答えに対して「そうですか」とだけ答えて、“深掘り”しないことが多いのです。
例えば、商品を売るとき、単に相手の話を聞いているだけでは売れません。「なぜ?」「どうして?」といった「理由を尋ねるフレーズ」を使いつつ、相手の考えを探っていくことが大切です。
相手は、思い込みや勘違いで話をしていることもあります。相手から「言われてみれば、○○ですね」といった言葉があれば、思い込みや誤解が解けたとわかります。
このように、「どうして?」「なぜ?」を効果的に使うことで、相手の真意や潜在ニーズを引き出し、より納得してもらえる提案ができます。
6W3Hを意識しすぎると
尋問めいた会話になる
ただ、6W3Hを聞かなければならないという思いが強すぎるのも問題です。