実は、6W3Hには「罠」が潜んでいます。気分よく話してくれている相手の話の腰を折ったり、正確な数字を資料にあたったりすることで、話が中断しかねません。それに、尋問めいた話になってしまう懸念もあります。

 また、「教えて、教えて!」とプッシュする姿勢が強すぎて、相手に問い詰められている感じを持たれると、信頼関係は築きにくくなります。

 例えば、数字に関する質問をしたとき、相手に「そこまで覚えていない」「数字は情報開示しているのに」と思わせないことが必要です。

 そのためには、質問を柔軟にし、相手が答えやすいように配慮すること。「ざっくりとした数字で結構です」など言い添えると、相手の負担が軽減でき、スムーズなやり取りが可能になります。

 また、会話の中で、その場にいない人に意識を向けることも有効です。

「細かい数字については広報の方にお聞きしたいのですが、可能ですか?」と広報や担当者を指名することで、相手が不安なく話せる環境を作り出します。

 相手の立場に配慮しつつ、細かい内容を直接求めるのではなく、担当者にフォローしてもらうように仕向けると、相手も安心して話せるでしょう。

常識にとらわれると
本音を聞き出せない

 まずは、想定していたテーマや「ほぐす」段階で見えてきたキーワードに絞り込んで話を聞くテクニックをお伝えしてきました。次に、ある程度聞けたと判断できたら、話の幅を広げていくことに移りましょう。

 広げるという作業は、可能性を否定しないということ。人の話を聞くときにやりがちなのは、先入観による決めつけです。

 話を聞くことは「聞けたらラッキー!」といったことが飛び出してくるかもしれず、それが重要な情報だったり、特ダネにつながったりするかもしれません。ですから、フラットな気持ちで聞くことが大切になってくるのです。

 新聞記者は、仮説を立てて取材に臨みます。常識にとらわれすぎると、大事なニュースや本音を聞き出すチャンスを逸してしまいかねません。「AならB、BでなければCの可能性はないだろうか」と思いをめぐらせる想像力が求められるのが、記者なのです。