歩幅の狭い人は広い人に比べて
約3倍も認知機能が低下しやすい

 歩幅の狭い人、言い換えると歩くスピードが遅い人は広い人に比べて約3倍も認知機能が低下しやすい

 調査の結果、規則的な食生活をする、定期的に運動をする、睡眠を取るなどの「健康意識」が高いのは、「開放性」「調和性」「誠実性」が高い人だった。その3つの特性の中でも「誠実性」が高い人の健康意識が最も高かったのだ。

「次にこの意識が高い人は、“どんな身体的な活動をしているのか”(健康行動)を質問しました。健康意識が高い人は、散歩、体操、バレーボールなど20種類程度ある健康行動のうち多くの種類を取り入れ、体をよく動かしていることがわかったのです。そして体をちゃんと動かしている人は、歩行速度も速いし、握力も強いという結果が出ました」

 歩く機能は非常に重要だ。歩くスピードが速い人は「転倒しにくく余命が長い」ことが明らかになっている。

 国立環境研究所環境リスク・環境研究センターの谷口優主任研究員がこう話す。

「歩くスピードは歩幅と歩調(テンポ)の掛け算で決まります。私自身の研究で、歩幅の狭い人、言い換えると歩くスピードが遅い人は広い人に比べて約3倍も認知機能が低下しやすいと発表しました。歩幅が狭い人は、脳の中に小さな異変が起こっていて、それが足に表れているのです。ところが反対に、歩幅を(意識的に)広くすれば、認知機能を維持できる可能性が高いです」

 誠実性が高い人は健康意識が高く、身体機能も維持されやすいが、それ以外の性格の人も「歩く機能」を保つように自分なりの大股で歩くといいかもしれない。

決めたことをずっとやる、
規則正しい生活が長生きに繋がる

 また誠実性が高い人は「自分が決めたことをしっかり守る」傾向もある。

 広瀬医師は、ある超百寿者(105歳以上)の女性が「リンゴが健康に良い」とラジオで聴いてから、30年間毎日食べ続けたと聞いて驚いたという。

「続けることの内容よりも、決めたことをずっとやるという規則正しさが健康に結び付いているのではないかと思います」(広瀬医師)

 就寝や起床の時間が一定、毎日しっかり朝食を取るなど、ライフスタイルが定まっている人ほど、病気になりにくく長生きをしやすいことがわかっている。

開放性と誠実性が高い人は
多様な食品を食べている

「そして食に関しては、国立長寿研究センターの大塚礼氏は『パーソナリティーと食品摂取多様性』を調べています。『何を食べるか』ではなく、『何種類のものを食べているか』ということですね。すると、開放性と誠実性が高い人は、食品多様性に関して高スコアを出しているのです」(増井研究員)

 腸内環境の側面からは、腸内細菌の多様性が健康を維持するとされている。腸内細菌は宿主(人)が食べたものの“残骸”を餌として生きているのだから、食品摂取の多様性があれば、腸内細菌の多様性に結び付くだろう。

 誠実性以外にも、長寿に関係する性格要素がある。