開放性が高い人は
認知症になりにくい

 増井研究員が国内の百寿者を調べると「男性では開放性が高く、女性では外向性、開放性、誠実性が高い」という結果が得られた。

100歳まで生きる人の性格とは?
【百寿者(100歳以上の長寿者)調査】
男性…開放性が高い
女性…外向性、開放性、誠実性が高い


出所:東京都健康長寿医療センターの増井幸恵准主任研究員の研究より

 開放性が高いと、新しいもの好きで変化を受け入れやすい特徴がある。

「それは脳の働きにとても良く、開放性が高い人は認知症になりにくいというデータもあります」と増井研究員。

「現代は流行の移り変わりが早く、ライフスタイルも流動的。新しい健康情報を得たり、最新機器を勉強して誰かに教えたり、若い世代の文化を知って幅広い世代と交流するなど、時代の流れに適応しようとする人のほうが最終的には楽しい暮らしができるでしょう。私がお会いした中ではスマートフォンを使いこなす100歳の男性もいました」

開放性が高い人は
好奇心旺盛で負けず嫌い

 広瀬医師が出会った百寿者の中では107歳でテレビゲームにはまった人がいたという。

「ですが、ひ孫と対戦して負けてしまい、それからは二度とゲームをしなくなったそうです。開放性が高い人は好奇心旺盛だけでなく、負けず嫌いでもありますね」

 特に男性の百寿者は心身が元気なまま100歳を迎える人が多いという。女性は男性よりも長生きする確率が圧倒的に高いが、骨折をきっかけに寝たきりになるなど要介護状態に陥りやすい。一方で男性は体も頭もしっかりしていないと、生き残れないともいえる。

「開放性が高い人は、ヘルスリテラシーが高く、健診受診行動(介護予防健診への参加)と関連があるという報告もあります」(増井研究員)

誠実性の高い人は幸福感を高めやすい
幸福感が強い人ほど長生きをする

 さて改めて「誠実性」に話を戻そう。日本の百寿者では、女性しか「誠実性」が含まれないが、世界の主流はやはり「誠実性が長寿につながる」からだ。冒頭の表には誠実性の要素として「目標追求」「意志の強さ」「几帳面」「努力家」が挙げられているが、研究報告によってはほかにも粘り強さ、向上心、自己有能感など、さまざまな言葉で誠実性が表現されている。

 増井研究員は「誠実性の高い人は、何か目標を設定し、そこに向けて真面目に頑張るということがポイント」と話す。

「やり遂げることで自信がついて、さらなる目標に向けて邁進(まいしん)するという好循環を生み出します。物事にポジティブな気持ちを持ちやすく、自己否定が起こりにくい。『私はやればできる』という前向きな姿勢が健康を保ち、幸福感を高めるんです」

 高齢者ではポジティブな気持ちを持つ、または幸福感が強い人ほど長生きをするという報告もある。

「ですから自分なりの目標を持ってコツコツとやっていきましょう。60歳から始めても、80歳まで20年間やり続ければその道のプロ。誠実性も発達するはず。何歳からでも長寿の性格になることは可能なのです」と増井研究員がエールを送る。

 年を取れば取るほど自分の殻に閉じこもらず、新しい物事に好奇心を持ち(開放性)、他者と自分との約束を守って、責任を持ってそれを達成する(誠実性)――これから先の人生で、この2つを大切に生きていきたい。

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