
現在40~50代となった世代が新卒だった頃(1993~2004年卒業)、就活はきわめて厳しいものだった。彼ら「就職氷河期世代」は政府の無策もあいまって、当時のつまづきを持ち越し、中年となったいまも不遇のまま生きている……と語られがちだが、実は違う。雇用のプロである筆者によれば、「就職氷河期世代」対策は、きわめて早い段階から実施されていた。にもかかわらず、氷河期から20年以上が経っても対策が終わらない異常性にこそ注目すべきだ。※本稿は、海老原嗣生『「就職氷河期世代論」のウソ』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
満足な就活ができなかったのは
優秀な女性に“席を奪われた”せい?
「こじらせた」と言っては失礼だが、氷河期問題が現実以上に悲惨に語られる裏には、「女性の社会進出」もあった。この時期に、女性の4年制大学進学率が急上昇し、早慶・旧帝大などの上位大学でも普通に女子学生が見られるようになったのだ。
その結果、就職では「女性に席を追われる」男子学生が増えた。氷河期問題を語る話者に、大卒男性がとみに多いのはそのせいだろう(もっとも、女子学生の場合、それ以前からはびこる男尊女卑的な風土に対する悩みは連綿と続くのだが)。このあたりも振り返っておく。
まず、1980年代の日本では、成績優秀な女子高校生に「4大行ったら就職ないよ」と短大を勧めるのが常識だった。これは親も高校教師もそうだ。
そして短大卒業後は、一般職事務員として企業に勤める。当時は結婚も今より早く、そのさまをクリスマスケーキ(適齢期は24、25まで、26過ぎたら売れ残り)と呼ばれた。そんな結婚までの短期間を企業で事務員として過ごす女子のキャリアは、「腰かけ」などと揶揄されたものだ。