
雇用統計など各種の数字を読み解けば、20年前の「就職氷河期」が現在まで影響をおよぼしている事実はほぼない。筆者によれば、たとえ就活のタイミングで不遇だったとしても、その大多数は、いまや人生をしっかり巻き返しているというのだ。ところが、テレビや雑誌といったメディアでは、「氷河期の悲劇」がしばしば取り上げられるのはなぜなのか。雇用のプロである筆者が、早稲田と慶應の各学部の就職事情をもとに分析する。※本稿は、海老原嗣生『「就職氷河期世代論」のウソ』(扶桑社)の一部を抜粋・編集したものです。
2008年から浸透し始めた
「偽りの氷河期問題」
就職氷河期の最終年が2004年なので、それから今年でもう21年にもなる。氷河期世代の当事者たちは、その心に残る「つらさ」を機会があれば口にしてきたことだろう。
一方、2008年のリーマンショックや派遣村騒動あたりから、「偽りの氷河期問題」が浸透し始める。大学生の定員や卒業数、就職について、正確な統計を知る人は世の中には少ないから、当事者たちの語る「つらさ」と「偽りの氷河期論者」の語るストーリーが重なれば、世の多くの人たちは違和感など持たずに信じてしまう。こうした虚偽の拡散過程で、マスコミと行政が重要な役割を果たす。
各紙・誌のオンラインメディア内検索で「就職氷河期」を調べると、以下のように関連記事がヒットする(2025年6月2日時点)。
ダイヤモンド・オンライン574件/プレジデントオンライン208件
東洋経済オンライン426件/日経ビジネス電子版165件
日本経済新聞669件
(各オンラインのトップページから単純検索。ただし、文中に一言「就職氷河期」とあるだけの記事や、他媒体からの転載記事なども含まれる)