結果、一般職女性社員は短期間で寿退職するため、また新たに大量の新卒求人が生まれる。だから「短大を出れば」就職には困らなかったのだ。バブル最盛期の頃、短大卒者の就職率は9割にも迫っている。これは事情を知る人からは「驚異的」とも評された。なぜなら、この数字は分母を卒業生全員に置いているからだ(現在の就職率は、院進学者などを除いた「就職希望者」をベースにしている)。
卒業後、花嫁修業をする人も当時は多かったし、少数ながら留学や進学をする人もいた。そうした人を含めても9割という数字は、希望者なら100%就職できたということだろう。
氷河期のどん底で
女子大学生の採用が急増
ただし、バブルが崩壊したとたん、企業は手のひらを返す。真っ先に一般職の新卒採用を止めたのだ。結果、前期氷河期(編集部注/1993~98年卒)からは短大卒就職率が急低下し始める。それから2年ほどのタイムラグを経て、1994年より短大進学率も低下し始め、1996年に4大と短大の進学率は逆転を果たす。彼女らが大学を卒業する2000年あたりから、「4大新卒で総合職に就職する」女性が増え始めるのだ。
「雇用動向調査」によると、従業員数1000人以上の大手企業の新卒正社員入職者に占める女性割合は、2000年には32.4%まで増えている(この頃はまだ、4大卒で一般職採用も残っていたから、総合職に限定したら女性比率は20%程度だろう)。
この時代の符合に皮肉なものを感じないだろうか。そう、氷河期のまさにどん底で、女子大学生の採用が急増したということだ。
氷河期といっても、バブル期の平均と比べて、大手の採用数は1割程度しか減っていない。にもかかわらず、悲惨さが語られるのは、「女子に席を奪われた男子学生」の嘆きの声が増幅されていることも大きかったはずだ。
同時に、当時はまだ企業には男社会が根づいていた中で、女子学生たちも就活には苦労した。彼女らは、この苦しさが「男社会」によるものか、「氷河期」によるものか判別できず、そこを混同して後世に語ったことも、氷河期の闇を深くしたと考えられるだろう。