政府はいち早く氷河期世代への
支援策を打ってきたが…

 氷河期問題をこじらせたもうひとりの犯人は、行政だ。といっても、「無策で通した」という世間の批判とは意味合いが異なる。

 2019年に政府が「就職氷河期世代支援プログラム(集中3カ年プログラム)」を決定した時、「遅すぎる」「今さら」という批判が渦巻いた。しかしこれは、大きな誤りだ。政府はかなり早い段階から、氷河期世代に対して、大掛かりな対策を精力的に打ってきた。

 まず、厚労省内の業務調整課にあった「若年者雇用対策係」にて、1990年代より対策を講じ始める。もともとこの部署が担当していたのは、「大量に採用した若者をどうするか」「旺盛な若年雇用ニーズにどう対応するか」といったバブル向けの雇用対策だったのが、氷河期に入り性格を変えたのだ。同係は2004年に「若年者雇用対策室」へと格上げされ、若年者の就労困難の解決が主務となった。

 当時から行われてきた政策を図表43にしてみた。対策が本格化しだした2003年からおよそ10年ほどの間、行政の活躍は、目覚ましいものがあった。早々に「ヤングジョブスポット」という若年不安定就労者向けの支援施設を開設したが、準公的運営で効率性に問題があったために閉鎖。就職支援に重点を置く「ジョブカフェ」と、心的支援に力を注ぐ「地域若者サポートステーション」に分け、NPOや民間活力を利用して効率的な運営を図るように刷新した。

図表43同書より転載 拡大画像表示

 一方で、ハローワークも新卒(新卒応援)・若年(ヤング)・通常に3分割し、年代相応の求人を集めて専門性を高める体制を構築している。

 また、若年不安定就労者のキャリアアップが目に見える形でわかるように、職歴ごとの獲得スキルを明示できる仕組み「ジョブ・カード」を作り、この記録に協力してくれる企業への助成制度も作っていた。