もっとも効果があった
「試行雇用(トライアル雇用)」

 こうした精力的な施策の中でも、「試行雇用(トライアル雇用)」は最も効果があったものといえるだろう。これは、不安定就業者が就職する場合、一定期間、お試し入社をしてみて、本人・企業双方が納得した場合に正社員に移行するという仕組みだ。

 お試し入社期間中は、企業に助成金が支払われる。この制度は、企業・就業者双方に安心感を与え、入職・採用を促進する良き役割を担う(申請作業がなかなか難しいことや、助成金支払いが遅いことなどの問題はあった)。

 図表44は試行雇用の活用状況を示したものだ。リーマンショックから東日本大震災までの不況期には、中小企業を中心にこの施策は重宝され、年間8~9万人が利用、4~5万人が正社員就職を果たしている。大学卒業時点の無業・フリーターは、氷河期最悪期でも年14万人強だったことを考えると、この施策だけでこれだけの就職数はなかなかのものだろう。

図表44同書より転載 拡大画像表示

 ちなみに、2003年~2012年の10年間で、こうした若年者の雇用対策費は、直接予算だけで図表43に示したように合計4166億円にもなる(2009年分は、総合対策で一括予算のため含まれていない)。また、関連予算の中にも若年対策と思しき項目が見られる。そうしたことも併せて考えると、若年雇用対策の総予算は、当初10年で5000億円を超えたのではないか。

 贅沢を言えば切りがないが、これだけの内容と予算額は、決して「何もしなかった」という誹りを受けるものではないだろう。にもかかわらず、なぜ、マスコミや識者は、「対策が何もされなかった」「今さら手遅れだ」という批判を繰り広げるのか。

 その理由はひとえに「無知」だからとしか言いようがない。