遺伝素因が性格に及ぼす影響は
およそ半分

 20年以上にわたり百寿者(100歳以上の長寿者)を訪ねて調査してきた慶應義塾大学医学部百寿総合研究センター・元特別招聘教授の広瀬信義医師によると「性格や長寿に関連する遺伝子は報告されているものの、百寿者を数千人集めることが難しく、引き続き調査が必要」という。

「例えばセロトニンの量を調節するセロトニントランスポーターという遺伝子にはS型とL型の2種類があり、S型を持つ人は不安感が強くストレスに弱い。L型は不安感が少なく、ストレスに強い特徴があると報告されています。

 またやる気の源である神経伝達物質(ドーパミン)の分泌をつかさどるドーパミントランスポーターという遺伝子もあり、この遺伝子の働き次第では、新しいことや時として危険なことが好きになる性格になることもあり得ます。こういった性格を左右する遺伝子が多数あり、健康や寿命などに関係する可能性もありますね」(広瀬医師)

 遺伝素因が性格に及ぼす影響はおよそ半分といわれる。残りの半分は環境要因で決まるのだ。自分の性格で直したいところがあれば、少しずつ変えていける可能性がある。

神経症傾向も調和性も
長寿につながる時がある

 増井研究員は「性格の5つの側面の中で、無理なく高めやすいところを伸ばすといい」と話す。

 先ほど紹介した「神経症傾向」は良いことなどなさそうだが、実は増井研究員らが100歳の人を調べると意外なことがわかった。

「神経症傾向は年とともに低下していくのが普通ですが、100歳の人の神経症傾向は若い時のままの状態を維持している場合が多いのです。ネガティブな面があるからこそ、危機に対する備えをして生き残れる面もある。特に高齢者はボケたくない、病気になりたくないといった不安感があるからこそ、頑張れるところがあるのではないでしょうか。ですから神経症傾向も適度には必要なのです」

 また今のところ「調和性」の性格は長寿に影響しないと考えられているが、要介護状態になった場合、利点となる可能性がある。

「介護する側にとって、調和性の高い人が相手だと負担感が少なくなることがわかっています。介護される立場になったとき、調和性が高い人は、介護してくれる人とスムーズで心地良い関係を構築できるでしょう。つまり誰しも自分の性格の中に長生きや健康に役立つ側面を持っているのです」(同)

 30代から40代で「性格は固定化される」という。だが50代以降でも「こういう性格になりたい」と思えば、その性格を表す「行動」をまねすればいい。外向性を高めたいなら人と会う機会を作ったり、開放性を伸ばしたいなら新しいことにチャレンジしたりしてみる。調和性の高い人を目指すなら他者への配慮を、誠実性ならコツコツ頑張ることを心がける。

 誠実性と開放性が長寿につながることを頭に置きつつ、「理想の自分」をかなえる行動を選んでいきたい。

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