確かに、子どもの頃に描いた夢を叶えて、死ぬまで夢を見続けることで幸せを感じる人もいるだろう。それを否定する気もない。それはそれでいいと思う。

 しかし、子どもの頃に見た夢を叶えることができずに生きている人も多くいるだろう。

 僕は、そういう人に向けて、もっと別の考え方もあるよ、夢を叶えることだけが豊かさではないよと「反対側」を見せることで、別の豊かさを見つけてほしいのだ。

「反対側」を知ることができれば、あなたは両方を比較し、自分に合ったほうを選ぶことができるし、あるいは両方の良い部分を取り入れることもできる。「こうあるべき」の狭い考えにとらわれず、もっと広い視野で物事を見ることが大切だ。

立派な人になろうとすると
「中道」から外れてしまう

 また、「良い、悪い」という評価をつくらないことも中道であるといえるだろう。

 例えば、世界を救うヒーローになりたいと思う人がいたとしよう。

 その人が「ヒーローでいたい」と思った瞬間に、その人は「悪」をつくり出すことになる。悪がいないとヒーローになれないから。同じように、「立派な人になりたい」と思った瞬間に「立派ではない人」をつくり出すことになる。

 みんなから必要とされる人でいるためにボランティアをする人もいる。この人は困っている人がいないと困るんだ。助けることができないからね。悪がいるから善をつくるのか。善でいるために悪をつくるのか。この違いが大切だね。

 良し悪しを決めつけ、物事を一面的に捉えるのではなく、広い視野と柔軟な発想を持ち、反対側からも考えることで、偏らないバランスの取れた生き方をすることが、「中道」の教えから学べることだ。