世界の富裕層たちが日本を訪れる最大の目的になっている「美食」。彼らが次に向かうのは、大都市ではなく「地方」だ。いま、土地の文化と食材が融合した“ローカルガストロノミー”が、世界から熱視線を集めている。話題の書『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著)から、抜粋・再編集し、日本におけるガストロノミーツーリズム最前線を解説。いま注目されているお店やエリアを紹介していきます。

「なんてもったいない…」日本の“世界最強コンテンツ”が眠ったままなワケPhoto: Adobe Stock

ビッグマック指数は54か国中44位

 これまでの連載でおわかりいただけるように、食は、日本が誇る最大のコンテンツです。

 ところが、これほど素晴らしいコンテンツがあるにもかかわらず、日本の経済力は低下していると言わざるをえません。

 たとえば、「ビッグマック指数」という国際的な経済指標があります。
 これは、世界中で同じ品質・内容で売られているマクドナルドのビッグマックが、それぞれいくらで売られているかを比較することによって、為替のバランスや購買力の違いを測るものです。

 2025年1月時点で、日本のビッグマック指数は54か国・地域中44位。つまり、日本ではビッグマックが他国よりもかなり安く提供されているのです。
 これは一見、「安くてありがたい」と思いがちですが、裏を返すと、日本の賃金が世界水準に比べて上がっていないことを表しています。

 そんな一見「安い国」になってしまった日本を再生させるもの。それは、再三にわたってお伝えしている「食」です。「世界のベストレストラン50」にも多数ランクインを果たし、ミシュランの星の数も多い。しかも、ファミレスやファストフードなど、安くて美味しいものも豊富。

 こんなに素晴らしい美食大国が他にあるでしょうか?

 だから、これを全面に打ち出し、多くの観光客に来てもらう。その中でも、特に富裕層に来てもらって、たくさんお金を落としてもらう。幸い、彼らはガストロノミーツーリズムに興味があるので、地方へ積極的に誘致することで大都市のオーバーツーリズムを解消させられる。

 前述した通り、これが、最適解だと私は考えています。

リピーターの9割は日本の地方に注目している

 実際、アジア8市場、欧米豪4市場を対象に行った調査によると、訪日リピーターの約9割が「日本の地方(首都圏や都市部以外)に行きたい」と回答しています。しかしその一方で、実際に地方へ行ったことがある訪日客は10%以下にとどまります。

「行きたい人が多いのに、行けていない」というこの事実は、日本が食をキラーコンテンツとして経済力を上げていくうえで、非常にもったいないと言えるでしょう。

 そこには交通インフラや宿泊施設の不足、情報発信不足など様々な問題が横たわっていますが、一つずつ粘り強く解決していくことが大切だと思います。

※本記事は、『日本人の9割は知らない 世界の富裕層は日本で何を食べているのか? ―ガストロノミーツーリズム最前線』(柏原光太郎著・ダイヤモンド社刊)より、抜粋・編集したものです。