毎日ナッツを摂取した人たちは
認知症発症リスクが12%低下

 昼食がカレーなら、“認知症になりにくい「とっておきの食品」”の二つ目は、間食向きの「ナッツ」。

 アーモンドやカシューナッツなどのナッツ類の栄養価と健康効果について、過去20年にわたり世界で200件以上の査読付き科学論文が発表されている。さらに「ナッツ摂取と認知症リスクの関係」についても今年、新しい研究が発表された(※2)。

 イギリスの大規模観察研究「UK Biobank」に参加した約5万人のデータを分析したところ、毎日ナッツを摂取すると、ナッツを全く摂取していない場合と比較して、平均約7年の追跡調査後に認知症発症リスクが12%低くなったと報告されているのだ。

 ナッツに詳しく、数多くの食関連著書を持つ慶応義塾大学医学部の井上浩義教授がこう説明する。

「アーモンド、カシューナッツなどのナッツ類には、タンパク質や良質な脂質、血糖値急上昇を抑える食物繊維のほか、強力な抗酸化作用を持つビタミンEなどが含まれ、動脈硬化予防に最強の一品といえます。実際に心血管疾患予防に働くという報告が数多くあります」

 動脈硬化予防、すなわち血管に良いのだから脳の血管も守るだろう。

1日30g(およそ23粒)まで
無塩ナッツを毎日食べると効果的

 筑波大学名誉教授で認知症専門医の朝田隆医師も、「認知症予防の食品として一つ挙げるなら、カシューナッツ」をイチオシする。

「認知症リスク低下に関係する『地中海食』の特徴にナッツがあります。オリーブオイルと同じオレイン酸を豊富に含み、強い抗酸化力が脳の神経細胞にダメージを与える活性酸素の害を防ぐでしょう。日本ではナッツを食べる習慣があまりないからこそ、日々の間食で積極的に摂取してほしいですね。クルミでもいいと思います」

 しかし、食べすぎは禁物だ。先のイギリスの研究でナッツ摂取量に基づいて人々を層別化して解析すると、「1日30gまで、無塩ナッツを毎日摂取すること」が認知症予防に効果的だった。30gとはおよそ23粒。スマートフォンの画面にアーモンドを並べると、ちょうど埋まるくらいが目安である。

 良質な脂質とはいえ、食べすぎはハイカロリー摂取に。「けれども適切な量であれば、むしろ肥満の人の体重減少に役立つという研究報告もあります」と井上教授が補足する。

 ちなみにアーモンドの摂取が閉経後女性において顔のシワの減少(※3)や、若年のアジア人女性において紫外線B波への耐性の向上と関連していることが確認されている。認知症予防に役立ち、かつ顔のシワが減少して美肌にもなるのだから、まさに年を取るほど摂取したい食品だ。

(※2)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39343863/
(※3)https://www.mdpi.com/2072-6643/13/3/785