ダイハツの検査不正問題とは何だったのか
2023年4月。ダイハツは側面衝突の認証申請に不正があったことを、自ら明らかにした。
問題は、個別の過ちから組織的な見直しを要する規模へと広がっていく。年末の第三者委員会の最終報告で、対象は複数の車種に及ぶ“面”の問題であることが確定し、会社は国内外の自社開発車の出荷を全て停止した。
調査の過程で、ムーヴも「試験条件の相違」という文脈で俎上(そじょう)に載ってしまう。性能適合は確認されたとしても、プロセスの正しさを問い直すという意味ではムーヴも“当事者”に他ならない。年が明けると当局の処分は複数車種の「型式指定取り消し」という非常に厳しい領域にまで踏み込んだ。社長と会長はこの件で引責辞任することになった。
経営体制が入れ替わり、認証と開発の統治を再設計する“組織の大手術”が施される。
その結果、2023年7月に発売予定だった7代目ムーヴは、検証工数の積み増しと開発標準の引き直しを織り込んだうえで、2年遅れの復帰戦にようやくこぎ着けた、というわけなのだ。
軽ハイトワゴンとしての“教科書ど真ん中”
前置きは大概にして、クルマの話に入ろう。
ムーヴは長らく「右ヒンジの横開きバックドア」をかたくなに守り続けてきたクルマである。先代の6代目で、その伝統を脱ぎ捨て、他社同様の一般的な“跳ね上げ式”に変更する。変更の理由は「伝統よりも実利」。風のあおりや隣車配慮といった日本の日常で、ドアを開ければ後ろに便利な“屋根”ができ(サーフィンをしていると良く分かりますが、この即席屋根はマストです)少ない所作で積み降ろしできる解が、時代の主流になっていたからだ。

そして今回の7代目では、これまた他社同様に、後席ドアのスライド化を行い、軽ハイトワゴンとしての“教科書ど真ん中”に座り直すこととなる。