ターボ仕様なら加速も優秀、高速の安定性も悪くない
試乗車はターボ仕様だったので、高速の合流や料金所を越えた後の加速は実に気楽だ。短い助走でもアクセルを素直に踏めば速度の立ち上がりが早く、合流時に余計な逡巡をする必要もない。高速の安定性も悪くない。直進時の“据わり”はきちんと出ていて、追い越しから走行車線へ戻す一連の動きも、修正舵は最小限だ。CVTのラバー感もほとんど感じない。
コーナーでスカッと気持ちの良いスポーティさは求めるべくも無いが、車線中央に素直に留まってくれる“従順”さがある。静粛性や乗り味の洗練は“軽として標準”で、一言で言えばフツーである。気になる癖や致命的な欠点は見当たらない。一方で飛び抜けて良いところもない。絶妙なバランスの上に成り立つ「軽のスタンダード」と呼べるクルマである。



総じて“80点主義ならぬ75点主義”。突出や過剰は狙わず、必要十分を外さない造り方である。とりわけスライドドアという生活の武器をこの価格帯にきちんと落とし込んで来たことは素直に立派だと思う(スライドドアは高く重く車体剛性の維持が難しくなるのだ)。毎日の所作が確実に軽くなり、合流や巡航で余計なストレスがない。
その一方で、長距離だけはシートの合わせ込みに工夫が要る。東京から湯沢までの往復を終えて残った印象は、派手さの代わりに安心感を積み上げた一台、ということだ。点数にすれば75点、だが日常の満足度はその数字より少し高い――そんな印象のクルマだった。
それでは最後に、このクルマの◯と×を。