これには三つの意図が透けて見える。
一つは軽ハイトワゴンの主戦場、すなわち狭い駐車環境でのストレス源を構造で断つこと。次に、荷さばきと乗り降りの導線を最短化し、雨天でも歩道側片開けで人と荷を素早く移動させること。三つ目はDNGA(https://www.daihatsu.com/jp/dnga.html)の共通化を梃子(てこ)に、“装備は要所で厚く、価格は分別よく”という全方位の最適化をやり切ること。
奇をてらわず、“暮らしの戦闘力”を上げる方向へ。
これが7代目の方針だろう。“個性の象徴”を捨て、日常の強さを最優先するスライドへ。プロダクトの合理性と我が国の駐車事情に根ざした選択を、認証不正という重い現実を経てなおやり切ったのだ。だから7代目は、一見「フツーの軽ハイトワゴンの教科書通り」に見えて、その実、「企業の再起動」という重い物語を背負ったダイハツの勝負球とも呼べるクルマなのである。
実際に乗ってみると……
いつものようにクルマをAD高橋氏から受け取ってクルマのまわりをぐるり一周。

面はよく張り、エッジは必要なだけ立っている。押し出しで驚かせるのではなく、丁寧な継ぎ目とRの処理で説得する実直なタイプ。スライドレールの溝が面の中に上手く沈んでいる。この処理は賢い。前後の造形はボディ同色のバンパーカバーに、ロワグリルやダクト周りのブラック加飾が淡いコントラストをつくっている。“盛る”のではなく輪郭を締める事に徹している。軽らしい、肩ひじ張らない端正さがムーヴの持ち味だ。