なぜなら、X子さんにとってA氏は仕事上の決定権を握る、いわば上位の立場にあった。そして、悪夢のような出来事が起こる。
「飲み会の直前になって彼女と中居さんを除く全員が、なんとドタキャン。結局、密室で2人きりにさせられ、意に沿わない性的行為を受けた。「A氏に仕組まれた」と感じた彼女は、翌日、女性を含む3名のフジ幹部に“被害”を訴えているのです」
逃げ道は作ってあったのに
なぜあえて訂正したのか
改めて記事を読むとわかるが、訂正記事にあるように、「(事件当日)X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」と週刊文春は明確に書いていないのだ。
ジャーナリストの西谷格が「週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった」(Newsweek電子版2025年1月30日)と指摘したように、週刊文春が弱味を見せたことを訝しがる意見も少なからずあった。
ただ一方で、取材班が「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」、「お店での飲み会(こちらについては文春は言及していない)」だったという女性セブン情報に引っ張られていた、ということはあり得る。
週刊文春の記事はなんとなくはぐらかすような筆致で話を進めている。おそらく、記者は「X子さんはフジ編成幹部A氏に誘われた」という情報に確信が持てなかったため「中居正広」、「X子」、「A氏」の関係だけをさらっと記述するにとどめ、「(事件当日は)A氏から誘われた」とは断定的に書かなかったのだろう。
私は第2弾記事を読んで、「中居から誘った」のだと再認識した。私は記者なので文章やファクトには敏感になるが、細部の違いに気が付かない読者もいた可能性はある。
文春編集部は第1弾記事しか読んでない読者がいる可能性や、誤読したままの読者がいる可能性を踏まえて、あえて訂正を行ったととらえることもできるだろう。
フジテレビ「A氏」は
「その日は誘っていない」
第一に言えることは、「訂正」により問題提起の根幹が揺らぐものではない、ということだ。権力の勾配のなかでトラブルが起き、被害女性がいるということは変わらないからだ。