徐々に自分のピッチングにも自信が持てるようになり、プロ入り4年目の夏からは、先発ローテーションの一員として起用してもらえるようになりました。

 人間は何かひとつのチャンス、あるいは転機があれば変わることができます。一度変わることができた人間は、そのあとにまた変わることができる(成長できる)と私は思っています。

「3カ月で球速10キロアップ」というとものすごいことのように聞こえるかもしれませんが、実は人間はそういう能力を誰もが持っています。

日々のメモの積み重ねが
常勝ホークスを築き上げた

 指導する立場の人間は、各選手のそういった能力を見抜いて、信じてあげることが重要です。

 だから私は監督に就任したとき、チームの勝利を目指すのと同時に「ひとりでも多くの選手に、長く現役生活を続けてもらう」ことを自分の使命として掲げました。自分が経験したことを選手たちに伝え、1日でも長く現役生活を送ってもらう。そのためなら自分は何だってする。

 もしかしたら、選手たちに一時的に恨まれたり、疎まれたりすることもあるかもしれない。でも、私が嫌われ者になっても、その選手が結果として「プロ野球選手になってよかった」「ホークスに入ってよかった」と思ってくれるのなら、私は本望でした。

 ひとりでも多くの選手に現役生活を少しでも長く続けてもらうために、私は愛情と情熱、自分の思いのすべてをぶつけよう。そのように覚悟して、私は監督になりました。

 指導者には選手の隠れた能力、まだ眠っている能力を見抜く、見出す力が求められます。また、その見出した力を開花させるには、その後いろいろなアプローチを用いて各選手と接していきながら、能力を伸ばしていってあげなければなりません。

 私は日々気づいたこと、思いついたことをメモ帳に記していました。毎日選手を観察しながらさらなる可能性を探り、何か発見があればその都度、すぐにメモをつけました。

 日々のメモの積み重ねはまさに観察力を磨くことにつながり、それによって得た新しい気づきをまたメモに記す。その繰り返しがしかるべき結果を呼び寄せてくれたと感じます。